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【第3回】吉長博の多眼カメラ入門講座「撮影した写真から立体GIFをつくろう」

      2015/06/12

吉長博の多眼カメラ入門講座

吉長博さんは、多眼のフィルムカメラを使って幻想的な立体写真GIFを制作されています。GIFアニメコンテスト「theGIFs」ではアート部門賞を受賞されました。本連載では、吉長さんに多眼カメラの選びから、立体写真の撮影、制作方法までを全3回でご紹介いただきます。

クリエイター:吉長博

originalフリー映像クリエイター。東京を中心に活動。動く立体写真GIFはGIFアニメコンテスト「theGIFs」で、アート部門賞を獲得。アクション映画好き。落語好き。SF好き。洋楽好き。立体写真好き。

撮影した写真から立体GIFをつくろう

 第三回では前回撮影した写真を立体視GIF作品にするための作業をご紹介していきます。前回よりも少し難易度が上がりますが、これをマスターすればあなたも立体GIFクリエイターです!順を追って見ていきましょう。

第三回で必要になる道具

PC(今回はソフトウェアAdobe Fireworksを使用して説明しています。もちろん他のソフトでも可能です。)
スキャナー(データ化されている場合は必要なし)

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スプライサー(はさみでも可)

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ダストブロワー

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編集用手袋

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※お店でデータ化する場合はPCだけあれば作業できます。

1. 写真屋でフィルムを現像する。

 勘違いされがちですが、現像とは、薬品処理でフィルムの像を出現・可視化して、感光性をなくし像を定着させることであって、プリントとは全くの別物です。今回の目的はGIF化ですので、プリントの必要はありません。お店で「現像のみ」であることを忘れずに伝えましょう。

2. 現像したフィルムをデータ化する。

A 自宅でデータ化する場合

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 多眼カメラ(4眼カメラ)のフィルムは4枚の像で1つのセットになっています。通常は店員さんがシートに収まる様に一定間隔でカットをしてくれますが、多眼カメラの場合、4枚の像の間でカットすることはあまり望ましくありません。店員さんに任せるとそうなってしまうかも知れないので「自分でカットをするので、切らないで長いまま下さい」という意志をしっかりと伝えましょう。
 ただ、それだけだとフィルムを収納するシートがもらえません。自宅での裁断後にシートは必要になるのでもらい忘れないように注意してください。現像処理にはスピード現像のお店なら30分〜1時間程度かかります。
現像代¥702/個)*料金は店舗により異なります。

B お店でCD-Rにデータ化する場合

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 吉長さんは自宅にフィルムをスキャンできる環境があるのでAのように現像のみを依頼しましたが、自宅でスキャンができない場合はお店でデータ化してもらうこともできます。フィルムは保管するだけなので必ずしも自分で切る必要はありません。
現像代¥702/個、データ化¥540/個)*料金は店舗により異なります。

お店でデジタル化した画像の問題点

※こちらは補足説明ですので読み飛ばして頂いても構いません。

1枚づつスキャンするので_W500

 小さな差ではあるのですが、お店でデジタル化を行った場合、四枚同時ではなく1枚ずつのスキャンを行うために、写真それぞれの明るさが変わってしまうことがあります。「明るさが変わる」というのは、おそらくスキャンするたびにソフトが自動補正するので、おそらく「明るい部分の面積」「暗い部分の面積」などで明るさの補正値が変わり、4枚の画像が同じ明るさにならないということでしょう。だいたい同じ明るさになるのですが、上の例ぐらい違う場合もたまにあります。上の例はお店から受け取ったデータそのままで、PCで色・明るさの補正をしてません。

 また、明るさはある程度4枚が均一になるようにPCで補正する事ができるのですが、「スキャンされない範囲」についてはどうすることも出来ません。下の写真をご覧ください。

お店ではよりトリミングされる_W500

 「本来フィルムに記録されている範囲」と、お店でデジタル化した「狭い範囲」の比較です。

お店ではよりトリミングされる2_W500

 ただでさえ、多眼カメラのGIF画像はフィルムに記録された画像をトリミングせざるをえないのですが、最初にデジタル化した時点でトリミングされてしまうと、それを揺り動かすことでさらに使用できる領域が狭くなってしまいます
 以上の難点はあるものの、加えてフィルム1本あたりの料金が高くなるものの、最初にお金をかけてスキャナを買うのに抵抗があるならば、あるいは、自分でスキャナを操作してPCに取り込むよりもはるかにお手軽かつ確実ですので、「お店でデジタル化」の選択肢は大いに考慮していいと思います。

3. データをPCに取り込む。

A 自宅でデータ化する場合

(1) フィルムを裁断する。
 手袋を装着し、ケースからフィルムを取り出します。

写真-2015-06-11-22-31-11

 フィルムをスプライサーで裁断します。このとき4つの像を分断しないように注意してください。裁断したフィルムは一度、シートに収納しましょう。

(2) Aスキャナーでフィルムをデータ化する。

通常のフィルム専用スキャナは_500

 吉長さんは20000円弱のフラットヘッドスキャナーを使っています。フィルム専用のスキャナーは安いもので10000円ほどで購入できます。
フィルム専用のスキャナーでも作業はできますが、通常の写真1枚分ずつ読み込みになるので、多眼カメラの画像4枚同時の読み取りができず、それぞれにわずかな読み取りのムラが発生してしまいます。

柱がない方が望ましい_2f_500

 すべてのフラッドヘッドスキャナーがフィルムをスキャンできる訳ではありません。フィルムをスキャンする機能がある製品を選びましょう。フィルムをセットするためのホルダーが付属しているはずです。
 フラッドヘッドスキャナーにしても、フィルムスキャナーにしても、フィルムをセットするホルダーにフィルムを押さえる「柱」があると後で面倒なので、その製品に付属しているホルダーに「柱」がないかどうか、前もって確認しておくのがいいでしょう。

スキャナをエアブロワーで_500

 フィルムをスキャンして画像をHD等に保存します。
 スキャン直前に、ダストブロワーでしっかりホコリをとばしましょう。

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 スキャナーの取り込みソフトでも画像の補正ができますが、プレビュー画像と実際に保存される画像に違いがあるので、自動補正のままで大きな不満がなければ、そのままスキャンして下さい。

(3) 4枚ワンセットで画像を補正をする。
 HDに保存されたデータをfireworksに読み込み、4枚が一つの画像のままで色・明るさの補正をします。

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 ここでもう一度保存してください。

(4)  (3)で保存した画像を4つに分割してレイヤーとし、1・2・3・4と番号を付けて、重ねる。

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B お店でCD-Rにデータ化した場合

 繰り返し行うのであれば、スキャナーのほうが安く済みますが、初めはお店でのデータ化でも結構です。
(1) CD-Rのデータを保存する。
 CD-Rの画像を読み込みHD等に一度保存します。

(2) fireworksにデータを取り込む。
セットとなる四枚の写真をfireworksに取り込み、4枚のレイヤーとして重ねて、Aの手順と同様に番号をふります。

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2. 4枚各レイヤーの位置を揃える。

 まだこの段階ではGIFアニメにしてもなめらかな動きにはなりません。写真に写っている人物などを中心にして画像の位置を揃えましょう。

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3. 各レイヤーの大きさを揃える。

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 位置を揃えたはずなのに動きがなめらかにならない。その原因はレンズの個体差によるわずかな歪みです。
 多眼カメラの本来の鑑賞方法であるレンチキュラー方式であれば、レンズの歪みの違いはさほど気になりません。しかしGIFアニメにした場合、なめらかなアニメーションにならずに、ガタガタした動きになってしまいます。
 そこで、ひとつひとつの画像を見比べて、サイズの違いを補正していきます。小さく映っているレイヤーを拡大すると画像が荒くなってしまうので、大きな方を縮小して補正します。
 99.9〜99.5%程度のわずかな縮小を何度か試みて、4枚が同じ大きさになる縮小率をメモしておきます。例えば、1番の画像が100%(大きさ変更せず)で、2番が「99.80%縮小して、もうちょっと縮小したいから更に99.88%、イコール99.68%」3番は「99.70%縮小して、もっと縮小したいからもう一度99.70%、イコール99.40%」このように見た目で判断して決めていきます。縦と横で縮小率を変えた方がいい場合もあるでしょう。
 これは面倒な作業のようですが、何テイクか行うちに、同一のカメラであれば近い数値になるのがわかるでしょう。
最適な縮小率を暫定的に決めて、それ以降の写真の調整は番号ごとに決まった縮小率を入力します。
 もちろん、違和感があれば縮小率を繰り返し変更してください。単純な拡大・縮小だけで完全に歪みを補正するのは難しい場合もあるでしょう。
 数値はカメラによって、レンズによって違います。他人が持っているカメラで出した値をあてにする事はできません。
 画像を調整するソフトウェアは、拡大・縮小率をパーセントで数値入力できるものであると便利でしょう。マウスでドラッグするだけでは、他の画像で同じように縮小を再現するのが困難だからです。また、「取り消し」を何度もさかのぼって行えるソフトであれば、最適な縮小率を求める時に試行しやすいでしょう。

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4. 各レイヤー位置の最終調整を行う。

 4つの画像がアニメーションする時の基準点を決めます。動きの中心となる基準点は、見る人の注意が向くポイントになります。明確な基準点は写真の主題を強調します。「動きのある写真」ならではの特権と言えるでしょう。
 一方で、基準点は立体効果の程度にも影響します。効果的に立体に見せたい物の、やや後ろに基準点を置くのが効果的です。

 今回は普通のモデル写真なので、モデルの目を基準点にしました。

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5. トリミング

 まわりの黒いフチが見えなくなるように外側を切り取ります。

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6.各レイヤーのノイズを修正する。

 スキャン時に読み込んでしまったゴミ、ホコリを目立たなくします。

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 ブラシで付近の色と同じになるように塗ります。必要であれば、この後また色補正を行ってください。

7.gif形式で保存する。

 gifの動きを繰り返し往復させたい場合はフレームを追加します。[1-2-3-4-3-2] [1-2-3-4-3-2]のように、4枚の画像であれば6枚のフレームで往復表示されます。(往復させないで「片道」だけのGIFもあり、それはそれで効果的な場合もあります。)
 切り替えスピードは10/100秒前後で設定します。吉長さんの最近の作品は12/100に設定することが多いそうです。

これで制作は完了です。

こちらが完成した作品です。

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カメラ Nimslo 3D
フィルム フジカラーSUPERIA X-TRA 400
スキャナー エプソンGT-F730

 下記リンクで吉長さんの過去作品、最新情報をご覧いただくことが出来ます。カメラ・写真・ガジェット好きの方、新しいご趣味をお探しの方、この機会に多眼カメラでおしゃれに立体写真撮影なんていかがでしょう。

(執筆:CREM編集部 篠宮航太)

クリエイター:吉長博

originalフリー映像クリエイター。東京を中心に活動。動く立体写真GIFはGIFアニメコンテスト「theGIFs」で、アート部門賞を獲得。アクション映画好き。落語好き。SF好き。洋楽好き。立体写真好き。

【関連リンク】
吉長博立体写真GIF作品ページhttp://gifmagazine.net/users/4935/profile
前回インタビュー記事一覧:http://cre-m.jp/category/creator/yoshinaga_hiroshi
yoshing blog:http://yhmv.blogspot.jp/

吉長博さんのTwitterアカウントはこちら

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