【第1回】吉長博の多眼カメラ入門講座「多眼カメラを手に入れよう!」
2015/05/22
クリエイター:吉長博
フリー映像クリエイター。東京を中心に活動。動く立体写真GIFはGIFアニメコンテスト「theGIFs」で、アート部門賞を獲得。アクション映画好き。落語好き。SF好き。洋楽好き。立体写真好き。
多眼カメラの入手方法
第0回で多眼カメラに興味を持っていただけた人もいらっしゃると思いますが、非常にマイナーなカメラですのでカメラ好きの方でもなかなか実物を見たことがあるという人は少ないのではないかと思います。ではそんな多眼カメラはどのようにして入手すればよいのでしょうか。第一回では多眼カメラの入手方法から説明していきたいと思います。
――多眼カメラ、面白そうですね。しかし、そんなに希少なカメラをどうすれば手に入れられるのでしょうか。
吉長さん(以下、敬称省略) ずばりネットオークションです。なんだか身もふたもない気もしますが、これが一番安値で手軽に多眼カメラを手に入れる方法ですね。少し前にウェブショップで、390円で購入できる店舗もあったようなのですが、現在、多眼カメラを安定して供給しているところは、ほぼないと言っていいと思います。
――やはり、実店舗での購入は難しいのですね。
吉長 自分はもっぱらオークションで入手してるので、売ってるお店の情報は持っていません。まったく売ってないという事はないでしょうが難しいと思います。
――オークションというと、少しお高いイメージがあるのですが…。
吉長 それが、そこまででもないんです。前回もお話したように、多眼カメラはレンチキュラーを作成するために発売されましたが、現在ではレンチキュラー作成のサービスを扱っている店舗がなくなってしまいましたので。
そのせいで行き場を失ったものや、買ってはみたものの説明書がなかったり、英語表記で規格電池や操作方法がわからずに、結局手放すことになったりした多眼カメラが、今になってネットオークションに出回っているんです。多眼カメラの現在での楽しみ方が分からずに出品されている方がほとんどなので、ヤフオクなどの国内オークションサイトでは安価で購入できることが多いですね。
――実際のところ、相場としてはどのくらいで買えるのでしょうか。
吉長 メーカー等も様々あるのですが、この「Nishika」という4眼カメラが一番ポピュラーでよく見かけると思います。これですと大体2000円もあれば、十分に未使用品が落札できますね。出品数も波はありますがNishikaであれば常に2.3個は出品されていると思います。
――意外にお安いんですね。それくらいなら気軽に始めることができそうです。
吉長 そうですね。先ほどの説明で「国内オークションでは」といいましたが、実は海外のオークションサイトでは、日本よりも盛んに多眼カメラが売買されているんです。送料20〜30$は覚悟しなければいけませんが日本ではあまり見ないものも売られていることがあるので、愛器で他人と差をつけたい人はそちらで探してもいいかもしれません。私はeBayというサイトをよくチェックしますが、英語に自信がない人でもGoogle翻訳とクレジットカードさえあればなんとかなりますよ。
多眼カメラの種類
――なるほど。多眼カメラはネットオークションで探すのですね。では、多眼カメラを選ぶ際のポイントも教えていただけますか。
吉長 一口に多眼カメラといっても結構な種類があります。通常のカメラのようにガラスレンズとプラスチックレンズの違いもありますし、プラスチックレンズであれば写りの癖の違いは大きいです。しかし、何といっても一番の違いはレンズの数ですね。デジタルですと2眼3Dカメラが少し前に流行りましたが、多眼フィルムカメラは4眼か3眼がほとんどです。
4眼と3眼の実際面での違いは後で述べるとして、初めての方にとってこういった選択はなかなか難しいと思います。そこで、最もポピュラーであろう2つの4眼カメラに絞って、ここでは紹介していこうと思います。
多眼カメラの機能・特徴を比べてみる。
Nishika N8000
NIMSLO 3D
吉長 まずレンズですが、Nishikaがプラスチック、NIMSLOがガラスレンズなので、NIMSLOのほうがハッキリとした写りになりますね。それに対してNishikaはトイカメラのような写真が撮れます。雰囲気ある写真が撮れるので私は好きです。この二つはどちらも4眼ですね。
――見た目、大きさだけでも随分と違いますね。
吉長 そうですね。NIMSLOはコンパクトでスマートですが、逆にNishikaのごつごつしてチープなフォルムに愛着がわくという人もいると思います。気になるのは値段だと思いますが、Nishikaの方が比較的安く購入できます。
ネットオークションなので一概には言えないのですが、相場はNishikaだと1000円〜2000円。NIMSLOは5000円〜1万円程度です。機能面では大きな差がないので、初めはより安価なNishikaでもいいかもしれませんね。
――ということで、今回はこの二つのカメラを使って撮影していきます。
フィルムの選び方
――続いてフィルムはどの様にして選べばよいのでしょうか。
吉長 フィルムを選ぶ基準は「枚数」と「感度」です。まず「枚数」ですが、これは一つのフィルムで何枚分の写真が撮れるかというものです。24枚撮りと36枚撮りがあります。
フィルムの価格はやや違いますが、現像代はあまり変わらないので、36枚撮りの方がおおむね経済的です。
ただ一つ面倒なことがありまして、この「~枚撮り」というのはあくまでも、レンズが一つしかない通常のフィルムカメラでの枚数なんです。
――通常のフィルムカメラとはどのような違いがあるのでしょうか。
吉長 通常のフィルムカメラと多眼カメラとで、フィルムの記録面積を比べてみましょう。
吉長 このようにカメラのフレームを比べてみると通常のカメラより小さいのがわかってもらえると思います。多眼カメラのフレームはハーフサイズといって通常のカメラフレームの半分のサイズしかないんです。
つまり、4眼カメラだと[1/2枚分×4個=2枚分]となるので、一回の撮影で通常のカメラの2回分のフィルムを使うということです。36枚撮りですと18回分。もう少し突っ込んで説明すると、3眼カメラで24枚撮りのフィルムを使うときは、[1/2枚分×3個=3/2枚分]を一回の撮影で消費するので、[24÷3/2=16]で16回の撮影ができるということになります。
難しそうですが、フィルムの枚数は2種類しかないから、すぐに覚えられます。
――なるほど。使うフィルムは一緒でも、少しややこしいですね。
吉長 次にフィルムの「感度」についてです。感度とは、どれだけ敏感に光に反応するかという値のことです。ISOという規格の数値で100、400、800の3つが一般的です。数値が大きくなるほど明るく撮れます。
――その三つはどのように使い分ければよいのでしょうか。
吉長 明るいところでは100を、暗いところでは800を、といった具合ですね。感度が高くなるほど値段が上がりますが、粒子が荒くなってきれいに撮れなくなってしまいます。もっとも、チープなレンズの多眼カメラであれば、粒子の違いはあまり感じられないかも知れません。
一般的に800は室内用と言われているのですが、私はストロボが好きなこともあって、800はめったに使いません。それに、ISO400で暗くて感度が足りない状況なら、800でもまだ暗い場合がほとんどだと思います。
ストロボの有無は写真表現の大きな要素なので、暗ければストロボを使えばいい、というのは乱暴な言い方ですが、逆に「その場が明るすぎたら光を暗くする」のも難しい場合があります。ISO800のフィルムを使用して屋外の晴天下で撮ると明るすぎる写真になってしまうでしょう。
ほとんどの多眼カメラはトイカメラなので、多機能なデジカメに比べたら露出の調整できる範囲が狭いと言えるでしょう。
暗かったらストロボを使えばいい。しかし明るすぎたらどうにもならない場合もあります。そのような状況になるかどうかを考えてフィルムを選びましょう。
Nishika、Nimsloとも専用ストロボがあります。しかし入手しにくいし、特に優れたストロボという事でもないので、安価な汎用ストロボを使うのもいいと思います。
Nishika N8000にHolga汎用ストロボを装着
――フィルムのメーカーによる違いはどうでしょうか。
吉長 メーカーごとの違い、これは言ってしまえば好みです。日本でそこそこ入手しやすいのはフジ、コダック、それとロモグラフィーでしょうか。今回はこの3社のフィルムを持ってきたのですが、フジのフィルムは優等生な写真。コダックはカリっとした感じ。ロモグラフィーはなんとなくぼんやりとした写真、といった感じでしょうか。
ロモグラフィーのフィルムは、以前は安くてよく使用していたのですが、最近値上がりしましたので、これからはフジとコダックが多くなりそうです。
――フィルムを選ぶだけでもなかなか苦労しそうですね。
吉長 フジかコダックなら値段の高いフィルムの方がきれいに撮れるのですが、そもそもトイカメラなのでリアルな質感を求めても限界があると思います。いろいろと試して、自分の好みを探ってみてください。
今回の撮影では、24枚撮り、感度400のフジのフィルムを使ってモデルさんを撮影していきます。
――いよいよ次回は多眼カメラでの撮影のポイントを吉長さんに解説していただきます。お楽しみに。
(執筆:CREM編集部 篠宮航太)
クリエイター:吉長博
フリー映像クリエイター。東京を中心に活動。動く立体写真GIFはGIFアニメコンテスト「theGIFs」で、アート部門賞を獲得。アクション映画好き。落語好き。SF好き。洋楽好き。立体写真好き。
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前回インタビュー記事一覧:http://cre-m.jp/category/creator/yoshinaga_hiroshi
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