【第1回】「プレゼン苦手」は克服できる モーショングラフィックス・スタジオ TO-FU 分かりやすく伝わる秘訣
データなどの情報をもっと分かりやすく伝えたい、スライドを用いるだけではなく印象に残るプレゼンテーションをしたい…そんな願いはモーショングラフィックスによって叶うかもしれません。モーショングラフィックスとは、文字やイラストに動きを与えた動画。複雑で分かりにくい情報を簡単に分かりやすく伝えられることから、企業が積極的に活用し始めています。今回、モーショングラフィックスを専門に制作する、日本ではまだ数少ないデザインスタジオであるTO-FUにお話を伺いました。どうすれば分かりやすい説明を作り出せるのか?そのヒントを全3回で連載します。
(執筆:CREM編集部 丸山亜由美)
クリエイター :TO-FU (大森 聖+大森 かずえ)
モーショングラフィックス制作をメインに活動する日本のデザインスタジオ。札幌に拠点を置き、国内外を問わず多数の企業や官公庁などのクライアントと提携する。建築出身の強みを生かして、リアルな空間におけるモーショングラフィックスの活用を積極的に提案。特にデジタルサイネージへの導入は、空間デザインまでを含めたプランニングに定評がある。直近では、日本最大級の100台連続デジタルサイネージである「シリーズ・アド・ビジョン名古屋」を手がけた。TO-FUはTO FUTUREに由来。
TO-FU:http://to-fu.tv
【第1回】「プレゼン苦手」は克服できる モーショングラフィックス・スタジオ TO-FU 分かりやすく伝わる秘訣
1:分かりやすさは国境を越える、モーショングラフィックスの幕開け
2:予算を一桁下げる、ネット時代の新たな広告
3:情報をドラマに仕立てる、絵コンテで描くストーリー
1:分かりやすさは国境を越える、モーショングラフィックスの幕開け
29 WAYS TO STAY CREATIVE from TO-FU on Vimeo.
−−文字だけのリストであった29の格言をビジュアル化した「29 WAYS TO STAY CREATIVE」。こちらの作品を発表されたのがきっかけで、モーショングラフィックスのお仕事が本格的に始まったそうですね。
TO-FU「2011年にvimeoにアップしたらすごいアクセスで。ギズモードなどのメデイアなどに掲載され、その後びっくりするくらいの問い合わせがありました。仕事がどんどん繋がるきっかけとなった、僕らの原点です。」
−−それから数年が経って、モーショングラフィックスを目にする機会がだんだんと増えてきました。その中でもやはり、TO-FUの作品に引きつけられてしまう。いつまでも見ていたくなる美しさと、自然と腑に落ちる分かりやすさの鍵は一体どこにあるのでしょう。
TO-FU「画面の中の空間に、どう物語を展開してゆくかは建築で養われたのかもしれません。建築の図面は究極のインフォグラフィック。クライアントや施工する人へ向けて、設計者が分かりやすく噛み砕いて描いたもの、それが図面です。そういう考え方がずっと根底にあるので。」
−−クライアントが世の中へ伝えたいことを、誰もが一目見ただけで分かるように図面化する。TO-FUのモーショングラフィックスは、建築で極めた型の上に成り立っていたのですね。
2:予算を一桁下げる、ネット時代の新たな広告
−−以前はモーショングラフィックス以外の映像も制作されていたとのことですが、今はその専門でいらっしゃいますね。
TO-FU「最初の作品を発表した当時は、youtubeなどのネットメディアの走りで。今まではCMを作るとなると何百万、何千万円もかかりました。でもモーショングラフィックスは一桁安くできて導入のハードルが下がる。そして広告ではないコンテンツの需要も高まるだろうという、ある意味根拠の無い自信もありました。」
−−予算を一桁も変えられる、その理由はどこにあるのでしょうか?
TO-FU「ソフトはadobeのafter effectのみ、つまりパソコン1台で作れるので制作の人件費もあまり掛かりません。クライアントの予算も限られていることがあるので、音楽も基本的にはフリーのものを使う。高品質で低価格なネットサービスも普及しており、動画制作を取り巻く環境が整ってきたことも大きいです。」
−−新しいアイデアとオープンなリソースを活用することが、コストダウンに繋がっているんですね。日本のモーショングラフィックス業界の先頭を歩んでいらっしゃる中で、どのようなことを感じますか?
TO-FU「去年あたりから流れが変わってきています。企業の考え方もネットにシフトしてきていて、広告や独自のコンテンツ制作依頼が増えてきました。あまりお金は掛けられないけれど、何かを伝えたいというニーズにマッチしてきているのではないでしょうか。」
−−広告以外にもマニュアルや学会発表など、分かりやすい説明が求められる場は数多くあります。モーショングラフィックス活用の幅は多岐に渡りそうです。
3:情報をドラマに仕立てる、絵コンテで描くストーリー

−−モーショングラフィックスを制作するにあたって、どの工程に時間を掛けますか?
TO-FU「1つの動画を作るのに基本的には1ヶ月くらいかかります。その3分の2は絵コンテを描く時間、動画は1週間くらいで作るんです。ストーリーを構築することが大切で、僕らの一番の仕事だと思っています。」
−−絵コンテを拝見すると…1コマごとに必要な情報が絞られて、アニメーションになってゆく様子がよく分かります。
TO-FU「情報を噛み砕いて、要素を落とし込む。それが絵コンテを描く工程です。単なる文字情報をドラマにするんです。」
−−厳選された情報のみを主人公にして、その物語を描く。情報にどのような意味を与え、どのように展開するか? この過程に時間を掛けることが、スムーズな繋がりと分かりやすさを作るんですね。
TO-FU「一度動画になったら後戻りするのは辛いので、絵コンテを作り込んでゆくんです。絵コンテは骨格となるものなので、何回もクライアントとやりとりを重ねて承認を取ります。それがお互いの安心感につながり制作に集中できます。最終的に動画に落とし込んだら、後は微調整する程度なんです。」
−−打ち合わせを重ねる中で、制作を依頼する側が気をつけるポイントはありますか?
TO-FU「どうしてもサービスや商品に思い入れがあるので、伝えたいことが多くなりがちなのですが、思い切って要点を絞り込むことが重要です。そうすることで動画が散漫にならずわかりやすいコンテンツになります。」
−−まずは伝えたいことを絞ることが必要なんですね。
TO-FU「実際に出来上がった動画を放映するメディアによっても伝え方が変わるので、具体的にどのように使うかを明確にすることも重要です。」
−−モーショングラフィックスをどう運用すれば効果的なのか分からない、という場合は?
TO-FU「初めて動画を作るクライアントの多くは、最初はどのように頼んでよいかわからなく不安な気持ちがあると思うので、その点をていねいに説明して、モーショングラフィックスの利点を理解していただくように、打ち合わせながら制作を進めていきます。」
プロフェッショナルと二人三脚だったら、新しい手法も上手く活用できそうです。第2回は具体的な技術に注目して、イラストやモーションなどがどのように作られるのかをお届けします。
(執筆:CREM編集部 丸山亜由美)
クリエイター :TO-FU (大森 聖+大森 かずえ)
モーショングラフィックス制作をメインに活動する日本のデザインスタジオ。札幌に拠点を置き、国内外を問わず多数の企業や官公庁などのクライアントと提携する。建築出身の強みを生かして、リアルな空間におけるモーショングラフィックスの活用を積極的に提案。特にデジタルサイネージへの導入は、空間デザインまでを含めたプランニングに定評がある。直近では、日本最大級の100台連続デジタルサイネージである「シリーズ・アド・ビジョン名古屋」を手がけた。TO-FUはTO FUTUREに由来。
TO-FU:http://to-fu.tv

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