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第9回「ドット絵で日本の日常を表現したgifアニメーション」

      2015/05/19

第9回「ドット絵で日本の日常を表現したgifアニメーション」

連載:GIFアニメーションの可能性-和の融合-

近年、様々なウェブサービスやアプリなどの登場によって、誰もが気軽にgifアニメーションを作成できるようになり、改めて注目が集まっています。たとえ、デザインやグラフィックに関して高度な技術がなくても、素材や見せ方、アイディア次第で魅力的な作品を生み出す事ができるgifアニメーション。そんな、まだまだ可能性を秘めたgifアニメーションを、様々な視点から紹介していきたいと思います。

“和”をテーマに、様々なgifアニメーションを紹介するシリーズ第9回目です。

 デジタルアニメーション技術としては既に古いと言われていたgifアニメーションが再び見直されたきっかけとしては、シネマグラフのような新しい表現技法が登場した事が挙げられますが、スマートフォンの普及も1つの要因となりました。プラグインなどが必要なく作成も閲覧も簡単にできるgifアニメーションは、スマートフォンやタブレットなどと相性が良かったのです。そして、こうしたスマホなどの普及で同じように再び注目を集めている昔ながらのコンピューターグラフィックの手法があります。ドット絵(ピクセルアート)です。

今回は、そのドット絵で日本らしい日常風景を表現したgifアニメーションをいくつかご紹介します。1041uuuさんの作品です。

第9回「ドット絵で日本の日常を表現したgifアニメーション」

 ドット絵と言えば、1980年代にパソコンやファミリーコンピュータを代表とするコンシューマーゲームで最もポピュラーだったグラフィック表現で、大ざっぱに言えば点描画やモザイク画のような手法です。ゲームが出始めた当時、限られた画像解像度やメモリ容量の中でいかに美しく表現豊かなグラフィックを制作するか試行錯誤されていました。やがてゲーム機の性能やCG技術が進化し、ポリゴンなどの3DCGが当たり前となってドット絵のゲームは姿を見せなくなりました。しかし、スマートフォンの普及によってスマートフォン向けのゲームアプリが急激に増え、再びドット絵のゲームが数多く登場するようになりました。現在では、グラフィック面でもシステム面でもスマートフォンとは思えない程のクオリティを誇るアプリゲームが登場していますが、ドット絵のゲームはちょっとした空き時間でもプレイできる気軽さがうけています。また、これだけCG技術が進化した現在でも、ドット絵はその独特の質感からグラフィック表現の1ジャンルとして根強い人気があります。そんなドット絵は、gifアニメーションとの相性も抜群です。

第9回「ドット絵で日本の日常を表現したgifアニメーション」

 さて、今回ご紹介している1041uuuさんのgifアニメーション作品は、ゲームの1場面を思い起こさせるようなドット絵で、大きなドラマなどは特に無い日本のある日常の様子が描かれています。桜の木のそばでのんびりする猫(1枚目)や、法浄寺というお寺近くの線路沿いの風景(4枚目)などは日本らしさと共にどこか懐かしさも感じさせますね。牛丼屋さんで居眠りするお客とお店の営業中にも関わらずスマホをいじる店員(2枚目)も、平和な日本を象徴しているようで面白い作品です。また、マンション近くの水辺でホームレスと思しき老人がバラック小屋で暮らす風景(3枚目)は、日本の厳しい現実の1場面が表現されていて、その全体的に暗く哀愁漂う雰囲気が印象に残りました。

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 ドット絵の作品は、ドットの粗さ(細かさ)の加減で作品の全体的な雰囲気も変わります。ドットが細かくなれば表現の幅も広くなりより深みのある作品になりますし、逆に粗くなれば、人や物をわかりやすく簡略化するデザイン的なセンスが問われます。ここまでご紹介した3つの作品は、ドット感が程よく感じられる粗さはあるのですが、アニメーションとしては猫のしっぽと小鳥が戯れる動き(1枚目)や、牛丼屋の蛍光灯や店員の持つスマホの液晶のチラつき(2枚目)などは、とても繊細に表現されていると感じました。また、街の遠景が写り込む川(1枚目)やホームレスが佇む水辺(3枚目)の、水面に映った景色が揺れるアニメーションが素晴らしいです。特にホームレスの作品(3枚目)の方は、欄干にとまって羽をつくろう鳥や水槽で泳ぐ金魚など、動いているものが水面に映りそれが揺らいでいるという複雑な表現が、ドット絵のアニメーションで見事に再現されています。

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 さて、法浄寺近くの線路沿いの風景(4枚目)は、イラスト制作をされている草壁さんの作品( http://kusakabeworks.net/gallery/the-house-with-signs-of-marufuku/ )をアレンジしてドット絵にしたgifアニメ作品です。これまでの3つの作品に比べると、ドットが細かくなり、全体的により奥行きや立体感が感じられるようになりました。ファミコンからスーパーファミコンになったような感じでしょうか。特に植物の表現を見るとわかりやすいと思います。アニメーションとしては雨と奥の方にさり気なく居る2匹の猫のしっぽの動きだけですが、サラサラと静かに降る雨の感じや地面や石などに当たって跳ねる水しぶきの様子がリアルに描かれています。雨については牛丼屋さんの窓(2枚目)でもアニメーションになっていて、窓枠に跳ねるしぶきも細かく表現されていますが、比べてみるとやはり違いますね。ただ、どちらにもそれぞれの味わいがあると思いました。

 ドット絵は、CG技術としては確かに古いものですが、CGの表現技法の1つとしてはまだまだ根強い人気を誇っています。それは、ドット絵全盛期のゲームにどっぷりと浸かっていた年代の懐古の情も多少はあると思います。けれどそれだけではなく、3DCGには無い独特のあたたかみや柔らかさといったドット絵ならでは魅力によるものだと思います。

 今回ご紹介した1041uuuさんの作品は、そんなドット絵特有の雰囲気が日本の下町や何気ない日常の風景に溶け込んでいて、強烈なインパクトではなくじわじわと印象に残ってくるような作品だと、個人的には思いました。パステル調の淡い色や落ち着いた色彩が多く使われているところも、1041uuuさんの作品の特徴であるように感じました。また、アニメーションの動きもさり気ないものが多いのですが、それだけに、どこかゲームを楽しむ感覚で動いている部分を探しながら見てしまう作品でもありました。何度か見ていて一番ハッとしたのは、法浄寺近くの線路沿い(4枚目)の、電信柱の奥と一番手前の家の屋根にいる小さな猫のしっぽが動いているのを見つけた時でした。ドット絵好きにはたまらない作品だと思います。
 1041uuuさんの作品は、描かれた日本の風景はどこか懐かしい感じのする味わい深い絵で、アニメーションもシネマグラフのような部分的でさり気ない動きですが、1041uuuさんの描くドット絵ならではの魅力がより引き出されているように感じました。

 1041uuuさんのサイトには今回ご紹介した作品に代表されるような、日常を切り取った穏やかなものから、ポップで色彩豊かなものまで魅力的な作品が数多く公開されています。ぜひご覧になってください。

取材させていただいたクリエイター・WEBサイト

「1041uuu」
http://1041uuu.tumblr.com/

執筆者:小木奏英

オモロイモンをこよなく愛する生粋の関西人。音楽系法人、小学校、法律事務所勤務を経て、なぜかエンタメまわりのライターに。座右の銘は「明日は明日の風が吹く」

GIFアニメーションの可能性-和の融合-

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