そこはかとなく好奇心を刺激するクリエイターの秘密基地。

そこはかとなく好奇心を刺激するクリエイターの秘密基地。

第1回「シネマグラフ的 木版画 GIFアニメーションの魅力」

   

第1回「シネマグラフ的木版画gifアニメーションの魅力」

連載:GIFアニメーションの可能性-和の融合-

近年、様々なウェブサービスやアプリなどの登場によって、誰もが気軽にgifアニメーションを作成できるようになり、改めて注目が集まっています。たとえ、デザインやグラフィックに関して高度な技術がなくても、素材や見せ方、アイディア次第で魅力的な作品を生み出す事ができるgifアニメーション。そんな、まだまだ可能性を秘めたgifアニメーションを、様々な視点から紹介していきたいと思います。

今回のテーマは“和”です。

第1回目は木版画を素材として作成された、印象深いgifアニメーションをご紹介します。ブログ「むけいかくなひと、しごとをさがす」の管理人である⑦*さんの作品です。2015年2月現在、「GIMPで日本の名画(木版画)をgifアニメーションにする!」と題して、同ブログに4作品が公開されています。

「巴の雪」/神坂 雪佳(かみさか せっか)

「巴の雪」/神坂 雪佳(かみさか せっか)

「月に梅」/小原 古邨(おはら こそん)

「月に梅」/小原 古邨(おはら こそん)

「関宿」/高橋 松亭(たかはし しょうてい)

「関宿」/高橋 松亭(たかはし しょうてい)

「うら磐梯」/川瀬 巴水(かわせ はすい)

「うら磐梯」/川瀬 巴水(かわせ はすい)

シリーズタイトルにあるGIMP(GNU Image Manipulation program)とは、オープンソースで開発されている画像処理ソフトの事です。グラフィック系のクリエイターの方にはお馴染みのソフトかも知れません。このGIMP、フリーウェアながら高価な有料グラフィックソフトにも引けを取らない充実した機能を備えています。アニメーションフィルターもその1つです。
⑦*さんは以前から、フリーウェアのGIMPを使って有償の定番ソフトであるphotoshopやillustratorにどこまで迫れるか、様々な画像処理を実践されています。その一環として、GIMPを使ったgifアニメーション作成にも取り組まれました。それが、今回ご紹介した作品なのです。

最初の作品「巴の雪」を作成した際、⑦*さんはその過程についてブログの中で次のようにコメントされています。

上のgifアニメは、元の絵から舞っている雪の部分をコピーして、ちょっとずつずらしてペーストしたレイヤーを4枚作り、アニメーションフィルターのブレンドというオプションを使いました。
ブレンドを使うと、各レイヤーの間を勝手に補完してくれるので、ただレイヤーを連続表示させるより、きれいなgifアニメになりました。

このように、⑦*さんは技術的に難しい処理はせず、ごく基本的な手順で今回の作品を作られました。しかも、アニメーションの動きについても、木版画の一部だけを動かすというシンプルなものです。しかしながら、ご本人の「きれいなgifアニメ」という言葉通り、「巴の雪」は舞い散る雪の動きが美しい臨場感のある作品に仕上がっています。その他の作品も、木版画特有の奥深い雰囲気や、静かな美しさが際立っていると感じました。

⑦*さんの作品の特徴である、木版画の一部だけを連続(ループ)で動かすという表現技法は、写真を部分的に動かすことで独特の雰囲気を生み出し、注目を集めているシネマグラフと同じ手法です。今回のgifアニメ作成に関する⑦*さんのブログには、シネマグラフについて特に発言はありませんでしたが、作品からは木版画とシネマグラフ的表現技法の融合による、新たな魅力を発見させられます。個人的には3作目の「関宿」が、特にシネマグラフと相性が良いと思いました。炎や光が反射する水面の揺らぎの表現が見事です。

 

gifアニメーションの素材として古い木版画を選んだのは、著作権の問題もあったとは思いますが、ロサンゼルス郡立美術館を訪れて以来、近代の日本画(木版画)の美しさにはまったという⑦*さんだからこその発想でしょう。そして、その独創的なアイディアとgifアニメーションに適した木版画を選ぶ確かな眼が、技術的には単純で動きも少ないながら、趣のある作品を生み出したのではないかと感じました。数多くの木版画の中から、今回素材とした印象深い作品を選んだ、⑦*さんの“木版画を見る眼”は改めて素晴らしいと思います。

 

さて、魅力的な作品によって木版画とgifアニメーションの新たな可能性や魅力に気づかせてくれた⑦*さんですが、2作目「月に梅」を公開したブログの最後を、次のような言葉で締めくくっています。

木版画ならではの、木目が出ているところがまた素敵です。
gifアニメにしてみて改めて、この静止画であることのわびさびが分かったような気がします。

木版画に強い関心を持ち造詣も深い⑦*さんならではの感想ですが、木版画を素材にしたgifアニメーションを作成した事で、改めて木版画そのもの(静止画)の魅力が映えるというのは、とても興味深い事だと思います。実際に、「月に梅」の元の木版画(静止画)を見てみましょう。

木版画「月に梅」/小原 古邨(おはら こそん)

こちらが元の木版画です。gifアニメーションと見比べてください。ちなみに“わびさび”というのは静寂の美や枯淡の趣を大事にする考え方で、日本独自の伝統文化です。
あくまで個人的な感想としては、はらりはらりと散る梅の花びらの優雅な美しさが目を引くgifアニメに対して、元の木版画は月明かりに浮かぶ梅の花の佇まいが印象的です。暗闇の空間が広いので、しんとした夜の静けさも感じられます。一芸術作品としては、それぞれ良さがあると思いましたが、“わびさび”を求めるならやはり元の木版画の方を選びます。gifアニメーション作品の存在によって、元の木版画の静かで澄んだ雰囲気が感じられやすくなったように思います。皆さんはいかがでしょうか。

 

今回ご紹介した⑦*さんのgifアニメーションは、木版画という伝統芸術にシネマグラフ的な新しい魅力を与え、一方では、元の木版画が持つ日本独自の美意識“わびさび”の魅力を改めて引き出すという効果をもたらした、とても奥の深い作品だと思いました。新しい作品にも期待したいです。

取材させていただいたクリエイター:⑦*

「むけいかくなひと、しごとをさがす」
http://marunanahoshi.hatenablog.com/

GIMPで日本の名画をgifアニメーションにする!神坂雪佳『巴の雪』編
http://marunanahoshi.hatenablog.com/entry/2014/09/28/002416

GIMPで日本の名画をgifアニメーションにする!小原古邨『月に梅』編
http://marunanahoshi.hatenablog.com/entry/2014/09/30/222559

GIMPで日本の名画をgifアニメーションにする!高橋松亭『関宿』編
http://marunanahoshi.hatenablog.com/entry/2014/10/17/205711

GIMPで日本の名画をgifアニメーションにする!川瀬巴水『うら磐梯』編
http://marunanahoshi.hatenablog.com/entry/2014/11/04/122839

執筆者:小木奏英

オモロイモンをこよなく愛する生粋の関西人。音楽系法人、小学校、法律事務所勤務を経て、なぜかエンタメまわりのライターに。座右の銘は「明日は明日の風が吹く」

GIFアニメーションの可能性-和の融合-

 - GIFアニメーションの可能性-和の融合-, クリエイター, 小木奏英 , , ,

crem fbpage header
(いいね!で最新記事を毎日受け取れるみたいですよ)

あなたの好奇心を刺激する
コラム、ビジュアルビュース、GIFマンガ、海外映像作品紹介記事を毎日配信

more