海を歩いたある男の話。『Sur sa trace』
※本連載ではご紹介する海外クリエイター様に許可を頂いて執筆をいたしております。
連載:海外映像作品の旅
本連載では、海外クリエイターの映像作品を中心にご紹介します。面白い作品から、不思議な作品、感動する作品をピックアップしGIFアニメーションを用いてご紹介します。クリエイターの創作哲学や作られた背景に触れる旅をご一緒しましょう。
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月と太陽の駆け引きで出来上がった鈍色の世界には、まだかすかに潮の匂いが残っているようでした。
かつての水平線は、ものの数時間のうちに地平線へと変貌を遂げ、ここに海が存在していたことなど、誰が信じられるでしょう。
いつも不思議に思うのです。あれ程の量の海水は、一体、どこへ消えてしまったのだろうか。そして、どこから再びやってくるのだろうか、と。
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空を覆う幾重もの雲と、その隙間から差し込む淡い斜光。この広すぎる干潟に響く海鳥たちの鳴き声からは、なぜだか空しさを感じずにはいられないのです。
少し遠くに、取り残された二隻の漁船が見えました。陸の上に船が転がっている光景というのは、なんだか奇妙な感じがします。
潮の湿り気を含んだ砂に足をとられ、ふと立ち止まり、自分が来た方向を振り返ってみると、そこには一本の長い足跡が続いていました。私は、思わず泣き出したくなりました。
干潟に来ると、どういう訳か感傷的な心持ちになってしまうのです。日常当たり前のはずの、ほんのささいな出来事が、どうしてこれほどまで簡単に琴線に触れてくるのか。
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隣にもうひとつ別の足跡があるのに気が付きました。だいぶ時間が経っているらしく既に消えかかっていましたが、その形状から、どうやら一匹の犬が通ったようです。しかし、この足跡なんだか様子がおかしい。
私は、いよいよ哀しい気持ちにならずにはいられないのであります。
『Sur sa trace』by de lafforest axel
【出典】https://vimeo.com/129766340
【de lafforest axel氏ホームページ】http://axel2laff.wix.com/axeldelafforest
執筆:CREM編集部(山岸泰佑)

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