そこはかとなく好奇心を刺激するクリエイターの秘密基地。

そこはかとなく好奇心を刺激するクリエイターの秘密基地。

【第3回】「旅は無傷ではいられない」水本博之の創作哲学

      2015/03/28

header_mizumoto_03

映像作家である水本博之さんは、主にアニメーションやドキュメンタリー作品の監督・制作をされています。探検家・関野吉晴氏の手作りの船でインドネシアから沖縄までを航海するプロジェクトに同行し、撮影・監督した「縄文号とパクール号の航海」が2015年3月28日より公開されます。今回CREMでは作品に込められた思いや、水本監督の生い立ち、作品哲学について全3回で連載します。
(執筆:CREM編集部 丸山亜由美)
【第1回】 探検ドキュメンタリー映画「縄文号とパクール号の航海」について
【第2回】「怪獣映画からはじまるクリエーター人生」水本博之の今に至るまで
【第3回】「旅は無傷ではいられない」水本博之の創作哲学

クリエーター :水本博之

アニメーション作品を国内外で発表しつつ、探検家 関野吉晴のプロジェクトに参加。ドキュメンタリー映像の制作にも携わる。海のグレートジャーニーの序章的作品「僕らのカヌーができるまで」パート監督、 TV「新グレートジャーニー最終章 日本人の来た道 海上ルート4700キロ・完全版」パート演出など。最新作は「縄文号とパクール号の航海」。また長崎県大村市の市民が絵を描いて映画を作る「きおく きろく いま」も発表を控える。

第3回「旅は無傷ではいられない」水本博之の創作哲学

04_kiku

ーー ご自身の作品の中に、水本監督らしさを意識することはありますか?

 

水本監督(以下、敬称省略) 自分らしさを伝えたくて作品を作ったことはないんです。観客側から見れば、「これが水本っぽい」というのはあると思うんですが。それはきっと、自分が信じているものや、自分の癖みたいなものが染みている結果なんでしょうね。

 

ーー 作品の中に自分らしさを追求しない監督が多いのでしょうか?

 

水本 もちろんやる人もいるかと思いますが、僕はそうせずに自分が好きだと思うことをやっています。だからアニメーションもやるしドキュメンタリーもやるし写真も撮ります。他の人から分かりにくいと言われて壁にぶつかったら、分かるように直すこともしょっちゅうありますよ。でもそうして直していると思考の軸は見えてきますよね。

 

03_

水本博之 2015年 「縄文号とパクール号の航海」公式サイトより

ーー ご自身の作品が映画祭にノミネートされたりと、華々しいご活躍のように思えますが…?

 

水本 映画際などではむしろ成功したことがなくて、ちやほやされたり評価されたことがないんです。まあでも負けることや失敗することってすごく大事で、自分のことが駄目だと思えるときが自分に立ち返る、新しいことをするチャンスなんです。これまでもなかなか評価されずに今回も企画だけ見れば派手な『縄文号とパクール号の航海』と出会ってるけど、4年間以上関わり続けて数え切れないパターンを作ってきたわけだし、ぶっちゃけキツかった。でも、その試行錯誤の時間を乗り越えたからこそ見えてきた風景があって。

 

ーー 作品を作る上で、負けるということが大きな原動力になっているんですね。

 

水本 負けるということはある意味無駄なことをしているのかもしれません。でもその無駄な体験もいつかは栄養になる日が来るんです。効率重視で生きていたら得られないものがあるわけですね。他者からの評価も同じことで、いいものを作ったと思ってもその場で評価されるとは限らないんです。そこで評価されなくても、また別の機会・違う世界もがあると信じて柔軟に生きています。

 

08hidariappu

ーー 水本監督の作家性は、柔軟に変化することにあるように思います。

 

水本 自分をあまり固定しないようにしているんです。作品を作る上での積み重ねはあるけれども、既成概念は捨てるようにする。

 

ーー クリエーターは自分自身の作家性をどのように見いだしてゆけば良いのでしょうか?

 

水本 失敗することですね。迷うことは悪いことではないんです。自分探しの旅はよく馬鹿にされるけれど、途中で投げ出さずに自分と本気で向き合うことは大事なこと。むしろ、真剣に迷えなくなったら終わりなんですよ。迷うことは停滞することではないから。

 

ーー そう考えると、自分探しの旅と作品作りは似ていますね。

 

水本 よく言われるのが、ドキュメンタリー作品は自分が用意した答え通りになったら面白くないということなんです。つまり、自分が取材前に想定した範囲の中でしか対象を掴めていないということで。未来って何が起こるかは分からないし、自分自身がどう変わるかも分からない。可能性はその都度変化を受け入れて、その都度努力して作ってゆくものですね。

 

【第3回】「旅は無傷ではいられない」水本博之の創作哲学

水本博之 2015年 「縄文号とパクール号の航海」公式サイトより

ーー 自分自身を固定化しないために気をつけるべきことは?

 

水本 吸収することをやめないことですかね。今は便利ですぐになんでもネットで調べられるし、映像も見れる。でも映像って僕が映画で演出するように、見せ方で見る人の感情をコントロールすることができる怖いメディアです。モニタ上の映像はある部分でしかないのにすべてを知った気になってしまうんです。だからこそ、パッケージングされていない世界を見る努力は必要かなと。だから僕はフラフラと知らない場所に出かけます。

 

ーー 水本監督にとって旅とは?

 

水本 用意された観光スポットは面白くないんですよ。いや面白いけど。でもだんだん、いつかはパッケージングされたものが面白くないときが来るんです。演出されたものが嫌で外に出かけていくのだから。現地で差別されたり、馬鹿にされたり、腹壊したり…旅は無傷ではいられない。本当はそういうもんかなと。差別されたら、差別された人の気分がわかるでしょ?

 

ーー 将来、映画監督を目指す人に向けて…どうすれば映画監督になれますか?

 

水本 そもそも映画監督という職業は存在しないのではないかなと思っていて。職業という定住的なものではなくて、作品を生み出す人というイメージです。まあ失敗しても落ち込んでも辞めないで、習性として習慣的に作品を作り続けること。なんとかなるだろうと思って、作り続けることじゃないでしょうか。結局作れなくなったら終わりだし。

 

jomon_pakuru

水本博之 2015年 「縄文号とパクール号の航海」公式サイトより

ーー 上映するまでに大変な苦労があって、発表したら批判されることもあったり。落ち込む機会はいくらでもやってくるわけですね。

 

水本 表舞台に立つまでにどれだけの時間を費やしたことか(笑)。大抵、落ち込むとみんな辞めちゃうんですが、落ち込まないことです。

 

ーー 表現することが怖いと思ったことはありますか?

 

水本 怖いというのとは少し違うかもしれないけれど…一時期、機材などテクニカルな周辺機器の性能が上がって、自分の作品は粗さが売りだったし、それが嫌われて埋もれるな思ったことはありました。

 

ーー その時はどうされたんでしょうか?

 

水本 表現するジャンルをドキュメンタリーに変えたんです。アニメーションの人はドキュメンタリーのことにあまり突っ込んでこない。逆も同じだと思います。僕は蝙蝠みたいなものです。その都度興味深くて動きやすいほうで作品を作るし、たまに混ぜたりもします。

 

09sizenhanasuegao

ーー アグレッシブに自分のフィールドを広げてゆく水本監督ですが、ご自身の性格についてはどのように思いますか?

 

水本 面白くないことを面白いと言えない性格で(笑)。 本音でしか何かを言えない。だから、自分が面白いと思うものを広げていけば、自信や根拠に繋がってゆくんです。ずっとアニメーションやってたら飽きるでしょ?ドキュメンタリーも。飽きっぽいようでしつこい、いろいろ行ったり来たり好奇心を持ち続けて行くことですかね。

 

ーー 今後の活動について教えて頂けますか?

 

水本 新作の『縄文号とパクール号の航海』は是非若い皆さんに見てほしい。ですから、東京の劇場公開を終えたらこれを持って、全国に上映活動に行きます。これが一つ。あとは、昨年長崎で、ある95歳のシスターと出会って昔話を聞きました。そのインタビューの様子を元に、1000人以上が絵を描いて作り上げた新作アニメーション作品「きおく きろく いま」のこの春発表して上映活動もしていきます。それに『縄文号とパクール号の航海』で登場しているマンダールの船乗りも引き続き取材してゆきます。人形アニメも作りかけのやつがあるんですよね、大変です。

 

全3回に分けてお送りしてきた水本監督の特集インタビュー、映画「縄文号とパクール号の航海」は2015年3月28日(土)公開です。ぜひ皆さま劇場でご覧ください。

(執筆:CREM編集部 丸山亜由美)

クリエーター :水本博之

水本博之さんのアイコン
アニメーション作品を国内外で発表しつつ、探検家 関野吉晴のプロジェクトに参加。ドキュメンタリー映像の制作にも携わる。海のグレートジャーニーの序章的作品「僕らのカヌーができるまで」パート監督、 TV「新グレートジャーニー最終章 日本人の来た道 海上ルート4700キロ・完全版」パート演出など。最新作は「縄文号とパクール号の航海」。また長崎県大村市の市民が絵を描いて映画を作る「きおく きろく いま」も発表を控える。

【関連リンク】
縄文号とパクール号の航海公式サイト:http://jomon-pakur.info/index.html

■公開日時
ポレポレ東中野で公開
3月 28 日~4月 10 日 12:30 / 15:30
4月 11 日~ 上映時間未定
*3月 28 日 12:30 の回は、本作主役で探検家の関野吉晴および、関係者舞台挨拶

【第1回】 探検ドキュメンタリー映画「縄文号とパクール号の航海」について[水本博之インタビュー特集]

 - 「縄文号とパクール号の航海」について, クリエイター, 水本博之 , , , , ,

crem fbpage header
(いいね!で最新記事を毎日受け取れるみたいですよ)

あなたの好奇心を刺激する
コラム、ビジュアルビュース、GIFマンガ、海外映像作品紹介記事を毎日配信

more