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【第3回】「負けを認めること。」野球から学ぶ映像作家の戦い方とは?水江未来インタビュー特集

      2014/12/05

【第3回】「負けを認めること。」野球から学ぶ映像作家の戦い方とは?水江未来インタビュー特集

水江未来さんは、国内だけでなく国際映画祭で活躍する短編アニメーション作家です。今回、Adobe ✕ GIFMAGAZINEで開催されるGIFアニメコンテスト「theGIFs」の審査員をしていただいています。本インタビューでは、3回に分けて水江未来さんの現在の作風に至った背景や、幼少期からの生い立ち、映像作家として生きる方法についてお話いただきます。(水江未来インタビュー連載 撮影:其田有輝也 執筆:Creator’s MAGAZINE編集部)

【第1回】「見られなかったら意味が無い。」作家が大切にすべきこととは?
【第2回】「同じことをやっても意味が無い。」水江未来の生い立ちとは?
【第3回】「負けを認めること。」野球から学ぶ映像作家の戦い方とは?

クリエイター:水江未来

水江未来さんのプロフィール画像
アニメーション作家・イラストレーター。「細胞」や「幾何学図形」をモチーフにした、物語のない音楽的なアニメーションを制作している。その作品は、ヴェネチア映画祭やベルリン映画祭でワー ルドプレミア上映され、世界最大のアニメーション映画祭・アヌシー国際アニメーション映画祭では日本人最多の2度受賞するなど、国際映画祭での評価を高めている。国内では、2014年にGLAYとコラボし、『GLAY EXPO 2014 TOHOKU』のアニメーション映像の演出や、マスコットキャラクターのデザインなどを手がけた。同年、自身の短編作品を集めた、映画『ワンダー・フル!!』が全国15劇場で公開。多摩美術大学情報デザイン学科メディア芸術コース、京都精華大学芸術学部映像コース・非常勤講師

【第3回】「負けを認めること。」野球から学ぶ映像作家の戦い方とは?

水江未来 中内友紀恵 2014年 トクマルシューゴ/Poker(公式ミュージックビデオ)

水江未来 中内友紀恵 2014年 トクマルシューゴ/Poker(公式ミュージックビデオ)

ーー 今までを振り返ると、どのような努力が大切だったとお考えですか?

 

水江未来さん(以下、敬称省略)戦い方を考えること。これだと思いますね。僕、野球が好きなんですよ。今だと日本ハムの大谷翔平選手は160km以上投げるじゃないですか。オリックスで活躍していた星野伸之選手(※1)はストレートで130kmしか出ないピッチャーだったんですが、11年連続で二桁勝利をしてるんですよ。まさに美大に入った時の自分を思い出します。

※1 星野 伸之(ほしの のぶゆき 1966年1月31日)北海道旭川市出身の元プロ野球選手(投手)。最速130km/hのストレート、90km/h台のスローカーブ、110km/h前後のフォークボールを使い、ストレートとの速度差を武器にして勝負する異色の投手。独自のスタイルを洗練することで球界を代表する投手の一人となった。

 

ーー 星野伸之選手の戦い方が参考になるということですか。

 

水江未来 そうです。星野選手は決してストレートが速くは無いけど、スローカーブを投げて緩急を使うことで、130km/hのストレートを150km/hにも感じさせて、自分自身の戦い方を見つけていました。僕も美大に入った時は、周りの描写力の高さにプレッシャーを感じてました。どうしたら自分がこの学科180人の中から勝ち上がっていくのかと必死に考えてましたね。

このまま描写力で勝負しても勝てない。誰もやらないことをやらなければいけない。それは一体なんだろう?そういえば面倒くさいことは誰もやりたがらないな。じゃあそこに何か突破口があるかもしれない。僕は細密画を描くことが好きだし、それならそれをひたすら描き続けよう。そう考えましたね。戦い方を考えなければ生き残ることはできないですからね。
【第3回】「負けを認めること。」野球から学ぶ映像作家の戦い方とは?水江未来インタビュー特集

ーー 野球から戦い方を見出していたのですね。その他にも大切されていたことはあるのでしょうか。

 

水江未来 はっきりと自分の負けを認めることだと思います。自分の負けを全面的に認めることは難しいことですが、早い段階ではっきりとした挫折を覚えることは大切なことだと思います。「本当はこうするつもりだった」とか、環境のせいにしたりしていると、じゃあ自分は何が得意で、何が不得意なのかが分かりづらくなります。誤摩化さずに自分の現状を直視することで、そこで初めて何をやっていくべきか、戦い方を考えていけます。卒業後も、ずっとこの考え方で映画祭で戦ってきました。

 

ーー 「負けを認める」というのは中々難しいものかもしれませんね。

 

水江未来 そうですね。僕の場合は、自分の中にもう一人の「水江未来」がいるという風に感じています。「挫折する水江未来」がいて「それに対して励まして戦い方を必死に考える水江未来」がいて、心の中でチームワークをとっているのかもしれません。自分の現状を受け入れて負けを認める。だけど自分の可能性を自分が一番信じる。この二つが、作家活動を続ける上で大切だと思います。

 

水江未来 ©2010年 「MODERN」

水江未来 ©2010年 「MODERN」

ーー 水江未来さんは、「TOKYO ANIMA! (※2)」など、作家としてだけでなく、若手アニメーション作家の作品を広める活動もされていると思います。その背景はどういったところにあるのでしょうか?

※2 TOKYO ANIMA!
水江未来氏と藤田純平氏が主宰する日本の若手作家の作品を中心とした短編アニメーションの上映イベント。

 

水江未来 正直、作家としての時間とイベントを企画することのバランスは非常に難しいと思っています。TOKYO ANIMA! を通じて、いい作品を紹介するのだから、自分も作家としていいものを作らないといけないというプレッシャーを自分にかけています。中途半端なものは作れないぞって。

 

ーー やはり、第1回でもお話がありましたが「見られなかったら意味がない」ということがこういったイベントを開催していく理由なのでしょうか。

 

水江未来 そうですね。作家は作品を作ることに専念すべきだけど、中々そうすることは難しいです。これからは作家同士が協力していくべきで、一人でやっていかない方がいいと僕は思ってます。いろんな作家がどんどん出てきて、作品を見せるためのいろんな場が出来ているんですけど、この先5年後、10年後、どうやって生き残っていくのか、またはこの短編アニメーションというジャンルを社会の中でどのような位置づけにしていけるかを作家達で考えないといけないと思ってます。ゆるやかなに協力し合うチームを作って、日本の短編アニメーション作家たちが活躍する場所をしっかり築いていきたいと思ってます。

【第3回】「負けを認めること。」野球から学ぶ映像作家の戦い方とは?水江未来インタビュー特集

 

ーー MIRAI FILM (※3)を設立された背景もそういったところからなのでしょうか。

※3 MIRAI FILM
水江未来さんが設立した映像デザイン事務所

 

水江未来 そうですね。「TOKYO ANIMA!」が短編アニメーションを美術のポジションに持っていくための活動だとすれば、「MIRAI FILM」は短編アニメーションを仕事のポジションに持っていくための活動です。「水江未来の仕事」だけでは無く、複数の作家が所属しているような場所で、きっかけだったりチャンスを得られるような場所にしたいと思っています。

作家は自分だけの手で作ることにこだわっている人が多いですが、一人だと抱えられる仕事の数にも限界があります。それぞれの作家のスタイルを出せる環境としつつ、チームでも仕事を受けられる環境にすることで、作家が仕事を引き受けながらオリジナル作品も作れるようになればと思います。

 

ーー ありがとうございます。今後の活動の展望を教えていただけますか。

 

水江未来 オリジナルの作品も企画が多数進んでます。完成したら皆さんにお見せできるのが楽しみです。それとは別に、長編で抽象アニメーションを作ってみたいと思ってますね。カルト映画みたいというか、抽象で長編なんて観たことないでしょ?誰も体験したことがない映画になると思います。映画館に観にきた観客が、どうやってここにやってきたのか忘れてしまうような、そんな意識を飛ばすような映画体験をさせたいと思ってます。

水江未来 ©2011年 「MODERN No.2」

水江未来 ©2011年 「MODERN No.2」

 

ーー それでは、連載の最後に映像作家を目指している方にメッセージをお願いします。

 

水江未来 なんでしょうね。自分だけの戦い方、作家性をとことん追求して欲しいということでしょうか。流行を追いかけてはダメです。平安時代は下膨れした顔で目の細い女性の絵が美人とされたけど、現代のアニメに出てくる萌え美少女キャラは全然違うデザインです。これは1000年の変化ですが、表現の世界は10年経ってしまえば、全く違うものがウケますし、表現の価値は固定化されることはないです。日々変わっていきます。新しい表現の価値を作り上げていくためにも、自分の戦い方や、作家性を追求していって欲しいと思います。

 

【第3回】「負けを認めること。」野球から学ぶ映像作家の戦い方とは?水江未来インタビュー特集

撮影:其田有輝也 執筆:Creator’s MAGAZINE編集部

 

 

クリエイター:水江未来(@MIRAI_MIZUE)

水江未来さんのプロフィール画像

アニメーション作家・イラストレーター。「細胞」や「幾何学図形」をモチーフにした、物語のない音楽的なアニメーションを制作している。その作品は、ヴェネチア映画祭やベルリン映画祭でワー ルドプレミア上映され、世界最大のアニメーション映画祭・アヌシー国際アニメーション映画祭では日本人最多の2度受賞するなど、国際映画祭での評価を高めている。国内では、2014年にGLAYとコラボし、『GLAY EXPO 2014 TOHOKU』のアニメーション映像の演出や、マスコットキャラクターのデザインなどを手がけた。同年、自身の短編作品を集めた、映画『ワンダー・フル!!』が全国15劇場で公開。多摩美術大学情報デザイン学科メディア芸術コース、京都精華大学芸術学部映像コース・非常勤講師

【関連リンク】
※お仕事のご依頼は、映像デザイン事務所”MIRAI FILM”公式サイトよりお問合せ下さい。
MIRAI FILM:http://miraifilm.com/

水江未来さんのTwitterアカウントはこちら

「MIRAI FILM SHOP」
水江未来のアニメーション原画が買えるネットショップがオープンいたします。100種類の原画を中心にdvdや各種グッズが揃った充実のラインナップです。作者自らが原画を送る、まさに産地直送のお店となっています。

「天才万博」
キングコング西野亮廣さんが司会を務める音楽フェスで、オープニング映像として水江未来さんの新作アニメーションが初披露されます。また、ライブ中はVJとして各ミュージシャンと共演もします

公演日:2014年12月26日(金)
会場:東京キネマ倶楽部
開場:18:00
開演:19:00
料金:1F スタンディング¥3,000
出演:ショピン/SEBASTIAN X/ハッチハッチェルオーケストラ/みにまむす/ハンバートハンバート
司会:キングコング西野亮廣
問い合わせ先:ホームレス小谷(070-6981-7784)
チケット:チケットぴあにて発売中[Pコード:232-571]主催者のホームレス小谷から直接購入も可能(@kotanimakoto)

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