そこはかとなく好奇心を刺激するクリエイターの秘密基地。

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【第1回】八崎篤がつくるプロダクト・東京ウッドピック

   

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「どうすれば日本の森林について知りたくなって、国産の木を使いたくなるか?」この問いに対して真摯に向き合っていらっしゃるクリエーター、八崎篤さん。八崎さんはドイツで環境生態学を学んで以来、ずっと木材とお仕事をしていらっしゃる木の専門家。その経験を生かして、木を使ったものづくりとワークショップを全国各地で展開されています。

一般的には、お箸やスプーンなどが多いですが、八崎さんの取り組みは実にユニーク。カホンというペルーの打楽器や木製のウッドピックを作っているんです。また、単にものを作るだけではなく、人と地域を繋いでいるコミュニティーデザイナーでもあります。今回は、八崎さんが作っているプロダクト・ワークショップ・コミュニティーの3つに焦点を当て、その内容を伺いました。

(執筆:CREM編集部 丸山亜由美)

クリエイター :八崎篤(プロダクト・コミュニティーデザイナー)

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カホンプロジェクト 東京/TOKYO WOOD PICK 代表/オトナリ 代表、長崎県出身。
ドイツで環境学を学んだのち、輸入建材商社(日本オスモ株式会社、株式会社ハーフェレジャパン)に在籍。
仕事を通じて日本の森林や木材事情に興味を持ち、カホンプロジェクトに参加。
現在はフリーランスとして国産木材の利用を促すイベントや参加型音楽ライブの企画運営や
ワークショップデザイン、講演活動、地域資源を活かす製品のプロデュースなどを手掛ける。

・カホンプロジェクト 東京:http://woods-kids.jp/
・TOKYO WOOD PICK :http://tokyowoodpick.com/
・オトナリatたちかわ:http://otonarimusic.wix.com/tachikawa

【第1回】八崎篤がつくるプロダクト・東京ウッドピック

1.漆器を再びジャパンと呼ばせたい、そのために自分ができること
2.音楽フェスのグッズが生んだ、新しいコミュニケーションのかたち
3.ドイツへの留学、環境問題の根本を解決するために

1.漆器を再びジャパンと呼ばせたい、そのために自分ができること

TOKYOWOODPICK01のコピー

第1回目は八崎さんが作っていらっしゃるプロダクト、東京ウッドピックに注目。どのような想いがあって誕生した製品なのか?その制作ストーリーを伺いました。

−−東京ウッドビックはどのようなプロダクトなのでしょうか?

八崎さん(以下、敬称略)東京の森から出るヒノキの間伐材、国産の漆を使っています。1枚に見えるけれど、3枚の木材が合わさっているんですよ。縦方向に繊維が伸びているものを2枚、その間に横方向に繊維が伸びているものをサンドイッチ。これで、色んな方向に引いても割れにくい構造になるんです。真ん中には和紙が入っていて、万が一折れてもパキッと飛んでいくのではなく、ミシっと折れるので安全です。意図的に折ろうとしなければ折れませんけど。」

−−どんなきっかけで制作されるようになったんですか?

八崎ミュージシャンと木工作家と飲んでいた時に始まったプロジェクトなんです。ミューズ音楽院という音楽の専門学校と一緒に作ろうということになって。初めはノベルティーに、という話だった。でも、ギター小僧はきっと引くから、ちゃんとしたものを作った方がいいということで進んでいって。ギターマガジンに記事広告を載せたら反響があって、これは手作り合板ではいかんと、きちんと製品化することにしたんです。」

−−なぜウッドピックに

八崎「僕は木材などの木に特化しているので、プロダクトを通してその良さを伝えてゆきたいと思っていて。ピックにしたのは、僕自身が音楽が好きなこともあって、木や漆の良さを音楽が好きな人にも知ってもらいたかったから。ピックは小さいから、捌ける木は少ないけれど、そういうメッセージを伝えてゆきたいんです。」

−−どんな工程を経て完成するのでしょうか?

八崎東京から木を送って、郡山で木をスライスしてから埼玉の工場で合板にしています。その後はレーザーで成形して模様を入れる。ヤスリがけは就労支援施設や福祉作業所で、漆塗りは専門の職人さんがそれぞれ行っています。そういうメッセージ性があるのだったら、ぜひ一緒にやりましょうと、色々な人が言ってくれ、協力してくれた。」

−−ピックを持つと、漆の質感が手に馴染んで心地よいですね。

八崎使う人、使うシーンを考えるのが、もの作りだと思うんです。エッジーなデザインはかっこいいけれど、痛かったりする。これ何ですか?と聞かれた時に、ただのピックと言われるだけでは無いものを作りたくて東京の木・国産の漆を使っていて…と伝えてもらえるようなプロダクトを作ることを心がけています。」

−−国産の漆にこだわっている理由は?

八崎「2年前、漆の人間国宝である室瀬和美さんのTEDを見たんです。漆の現状とこれからのプレゼンが素晴らしかった。磁器はチャイナと呼ばれるけれど、昔は漆器はジャパンと言われていたんです。でも今はラッカーと呼ばれてしまっている。」

−−なぜ、日本で漆が扱われなくなっていったのでしょう?

八崎手間がかかるし、高い、食洗機には弱くて使えないんじゃないか?などというイメージのせいです。でも、200年前の漆が綺麗に残っているように、漆ってとても強いんです。だからその強さや美しさを見直してもらいたい、漆器をもう一度ジャパンって言わせたい。そう聞いて、そうですよね!と。だから国産の漆、二戸の浄法寺漆産業さんの漆を使っています。」

2.音楽フェスのグッズが生んだ、新しいコミュニケーションのかたち

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−−こちらの製品はいつから販売されているんですか?

八崎去年の7月から販売を開始しました。価格は1500円でホームページで販売しています。友達の誕生日プレゼントとかって、1500円くらいで探すとあんまりいいものがなくないですか?だからギター好きの友達にプレゼントとして贈れるものを、と思って。」

−−木製だとどんな音がするんだろうって、ギター好きな人がもらったら、きっと嬉しいはず。

八崎「昨年の夏、音楽フェスのグッズとしても販売したんですよ。アイランド・ミュージック・パーティーという江ノ島のフェスで。そうしたら、色んな出演者にサインをもらう人が続出したんです。このピックのジャケットに描いてもらって、思い出として飾れる。色紙のように使う、そんなコミュニケーションが生まれたんです。」

−−フェスのグッズ、というプロダクトだけではなくて、新しいコミュニケーションも作り出せたわけですね。

八崎「ただ単にお金とモノのやりとりではなくて、買った後にコミュニケーションが生まれることに気を配って企画をしています。パッケージとロゴは同じデザイナーさんにお願いしています。音楽グッズから離れたくなかったから、CDジャケットのサイズで真ん中に穴が空いていてピックが見えるように、と頼んだらこれが返ってきて。やっぱり形にできるデザイナーさんってすごいなと。」

−−サインをもらうコミュニケーションに一役買っているデザインですね。

八崎「最近、文化庁が国宝や重要文化財の修復には国産の漆を使用するように方針を決めました。国宝の修復にも漆が使われているようになってきているんです。そういうのを聞いて、すごく嬉しい。職人さんは一見取っ付きにくいけれど、尊い仕事をしていると思うんです。その仕事を続ける人がいなくなってしまうのは、すごく残念で。少しだけれど、その職人さんが仕事を続けられるように、国産の木や漆の良さを伝えてゆきたい買った人の口から伝わってゆくのがいい商品の条件だと思うので、できるだけそういう風にしてゆきたいんです。」

−−東京ウッドピック、今後の展望は?

八崎「海外で売りたいと思っています。日本人はすぐに新しいものに飛びつかないけれど、海外の人はすぐ取り入れる傾向があると商社で働いている時に感じたんです。いいねぇ、俺使ってみるわ!って。だから既にパッケージには6カ国語入っているのです。」

−−世界への進出、準備万端ですね!

3.ドイツへの留学、環境問題の根本を解決するために

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−−八崎さんはどのようにして木と関わるようになったのでしょう?

八崎「高校の頃、オゾンホールや温暖化といった環境問題が騒がれ始めた時で、それについて勉強したいと思ったんです。こういう問題を解決しないと、根っこからやらないと世の中ってよくならないよなと。例えば貧困の問題で、お腹がすいている子供にパンをあげることはできる。その場はいいかもしれないけれど、でも結局は教育の問題で。だから、根本にある環境問題について知りたいと思ったんです。」

−−高校を卒業された後は

八崎「環境学をやりたかったんですが、日本には環境学を学べる大学がほとんどなかったドイツには学べるところが多いと知って、外国語学部のドイツ語学科を出ました。卒業してからは一般企業で1年くらい働いて資金を稼ぎ、その後ドイツへ。ワーキングホリデーの制度ができたばかりで、これは行かねば!と。働きながらドイツ語の学校へまず通いました。」

−−ドイツ留学にこだわったのは、現地で環境学を学ぶためだったのですね。

八崎「その後、外国人のための入試に受かって、ルクセンブルクのすぐ近くのトリヤーという都市にある環境学部へ進学しました。ビールとワインを飲みつつ勉強して、2年くらい学部生を経験しました。でも、学者や研究者になりたいわけではなくて、ドイツ語や環境学を生かした仕事をしたいと思ったんです。」

−−それから木材と共に歩むお仕事が始まった?

八崎ドイツから建築家などに木材を売る仕事に就きました。木の気持ちよさや木を使うことで環境が守られるとか、サスティナブルな環境を作ることを伝えられると思って。森林組合や工務店などもお客さんだったのですが、なかなか商談がまとまらないドイツの木は高級木材。高くていいものなのは分かるけれど…日本の木でいいんじゃない?と。その中で日本の森の現状をお客さんから教えてもらったんです。」

−−日本の森はどんな状況にあるのでしょう?

八崎「戦争で家が沢山焼けたので、立て直しのために沢山木を植えた時期があるんです。スギ・ヒノキ・マツなどの単一種を大量に。家を建てられる位の大きな木を育てるには間引きをしなくてはいけない。需要が多かったときは、その間伐材が足場になったりして循環が生まれていたんです。間伐材が安いながらに売れていた。」

−−その日本の木材が、なぜ売れなくなってしまったのでしょうか?

八崎鉄筋やパネル工法の普及で、家が木で作られなくなってきたんです。加えて、中国やロシアから安い輸入材木が入ってきた。日本の間伐材が売れなくなって、日本の木が高級木材になってしまった。全体の流通量が縮小して、木を切る人・運ぶ人・製材をする人がどんどん少なくなって。整備しても売れない、補助金もらってもギリギリ、では放っておこうと。」

−−そうなると森はどうなってしまうのでしょう?

八崎沢山の木が生い茂る。暗くて鳥や昆虫が来ない、ジメジメした森になってしまう。そうすると土砂災害に繋がるんです。森の中の循環が良くないから、そういう自然災害が起きる。その循環をできるだけ良くしようと思って、東京ウッドピックやカホンプロジェクトなどを行っています。」

第1回目のテーマは【八崎篤がつくるプロダクト・東京ウッドピック】と題して、八崎さんが手がける木製のウッドピックに注目しました。次回は、木材を使ったペルーの伝統打楽器・カホンのワークショップについてのお話を伺います。

(執筆:CREM編集部 丸山亜由美)

クリエイター :八崎篤(プロダクト・コミュニティーデザイナー)

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カホンプロジェクト 東京/TOKYO WOOD PICK 代表/オトナリ 代表、長崎県出身。
ドイツで環境学を学んだのち、輸入建材商社(日本オスモ株式会社、株式会社ハーフェレジャパン)に在籍。
仕事を通じて日本の森林や木材事情に興味を持ち、カホンプロジェクトに参加。
現在はフリーランスとして国産木材の利用を促すイベントや参加型音楽ライブの企画運営や
ワークショップデザイン、講演活動、地域資源を活かす製品のプロデュースなどを手掛ける。

・カホンプロジェクト 東京:http://woods-kids.jp/
・TOKYO WOOD PICK :http://tokyowoodpick.com/
・オトナリatたちかわ:http://otonarimusic.wix.com/tachikawa

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