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今、美大生が会いたい 僕らの師匠【映像作家・映画監督:山田 智和】

      2016/11/18

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現役美大生が「いま会いたい、僕らの師匠」と直球で対談する、最高にクールなクリエーターズ・インタビュー。今回ご登壇いただいたのは、現代都市のリアリティを洗練された映像美で描き出し、サカナクションや水曜日のカンパネラなど話題のミュージシャンを惹きつける注目の若手ディレクター、山田智和さんです。(企画・編集:丸山亜由美、執筆:坂口文華、インタビュー:軍司拓実)

山田 智和:映像作家・映画監督

東京都出身。日本大学芸術学部映画学科映像コース出身。TOKYO FILM・Caviar所属。CMMV、映画を中心にディレクションを行う。 2012年、短編映画「浮かび上がる」がアップルストア銀座にて特別上映。2013年、映像作品「47seconds」がWIRED主催WIRED CREATIVE HACK AWARD 2013グランプリ受賞、2014年、同作品が国連が共催する世界最大規模の国際コンテスト、ニューヨークフェスティバル2014にて銀賞受賞。 同年、映像作品「A Little Journey」がリコー主催のGR Short Movie Awardにてグランプリ受賞。シネマティックな演出と現代都市論をモチーフとした映像表現が特色。

ホームページ:http://tomokazuyamada.com/

――まず山田さんが映像に興味をもったきっかけを教えてください。

中学、高校のころから映画がとにかく好きで、押井守監督とか岩井俊二監督の世界に憧れたのがきっかけです。でも専門的に映像を学ぶようになったのは、日本大学の映画学科に入ってからですね。

――大学へ入るときにはすでに、映像で生きていく覚悟が決まっていたんでしょうか?

そうですね。僕は大学へ入るまでに2年かかったので、「もうこれしかない」っていう気持ちで学校に行ってました。だから自分からどんどん動いてたし、たぶん学校で1番作品を作っていたと思います。

――大学卒業後はそのままフリーランスになられたということですが、お仕事はどのように見つけていたのでしょう?

最初は全く仕事がなかったんですが、自分は監督だと言い張って、友達に借金して自主制作をしていました。その作品が徐々に賞を頂いたり、評価されてきて、少しずつ仕事を任せてもらえるようになったという感じです。

『47seconds』

――東京を中心に「都市」をテーマとした作品を数々制作されていますが、山田さんは「都市」のどのようなところに惹かれていらっしゃるのでしょう?

ビルとビルの間とか、路地裏、空き地みたいな、なんか創造の余地を感じさせてくれる場所がすごく好きなんです。東京には特に、そういったストーリーが生まれそうな街の隙間がたくさんありますよね。

それと僕は作品を作るときにいつも「現在性」、つまり今この世界で起きていることをテーマにするっていうのを大事にしていて、その「現在性」を代表しているのが、やっぱり街だと思うんですよ。だから街や都市をテーマにした作品が多いんだと思います。

――都市や街を描くことで、映像に現実世界とのつながりをもたせているんですね。

なんというか、現実世界で起きている出来事をちゃんと身近な問題として自分のなかに消化したいっていう気持ちがあるんですよね。だから現実世界と全くリンクしていないものを作る必要はないと思っていて、必ず作品のどこかにリアリティをもたせるよう気をつけています。

――“現代の都市を表現する”という山田さん自身のコンセプトが一貫してあるなかで、そこに各々の曲のイメージを合わせていくのは難しいのではないでしょうか?

いや、特にその2つを別物としては捉えていなくて、日常の一部に音楽があるという感じかな。音楽ってよく街中にBGMとして流れてますからね。

むしろ、その曲のテーマとか歌詞を日常に置きかえたらどうなるんだろうって考えると、曲ってすごくヒントをくれる存在なんですよね。もっというと、曲調とか曲のBPMもヒントになる。例えばBPMって心臓の鼓動みたいなものなので、演者がどういうスピードで歩いたり踊ったりすればいいかっていう指標になるんですよ。

だから音楽は常にインスピレーションをくれる存在だし、CMでも映画でも、映像にとって音楽はかなり大事な存在だと思います。特にMVは最初からいい音楽があるので、やっていて面白いですね。

――山田さんの作品はどれも、シンプルで洗練された表現に女性の姿が映えていて、とても印象的です。美しく、強く印象に残るような映像を撮影するために気をつけていることはありますか?

一番は、なるべくリアルな映像にするっていうことですね。たとえCGを使っていたとしても、見ている人にCGだと思わせない。それでいて感情移入ができる映像になるよう、リアリティをしっかり作品の中でコントロールすることに気をつけています。

――抽象的なイメージのつながりが美しさや面白さを生み出しているような作品も多く見受けられるのですが、見る人を惹きつける映像を作る秘訣はなんでしょう?

別に外に向けて説明する必要はないんだけど、自分がなぜそこにカメラを向けたのか、その理由を自分のなかではっきりさせるようにしています。

面白いことに、まず直感で「この場所いいな、ここで撮ろう」って思ったあと「でもなんでいいと思ったんだろう」って考える逆転バージョンが意外とあるんですよ。だから直感をただ直感として片付けるのではなく、自分がそう感じた理由を突き詰めて考えるようにしています。

やっぱり「なぜ美しいのか」「なぜそこでその表情をするのか」っていうのが分かってないと、美しい画は撮れないと思うんですよね。でもその理由をわざわざ伝える必要はなくて、見ている人には、ただ純粋に美しいとか、女の子かわいい、なんかステキっていう感覚が伝わればいい。ただそこで、単なるキレイなイメージ映像で終わらないためには、やっぱりストーリーに対して想像の余地をちゃんと残しておきたいですね。

例えば水曜日のカンパネラの『ツチノコ』。あれ実はオリンピックがテーマで、聖火(花)ランナーの話になっているんですよ。

でもそれは全て裏の意図なので、別に伝わらなくてもいいと思っています。ただ、そういう意図がちゃんとある映像だからこそ、見ている人を惹きつけることができるのかもしれませんね。

『ツチノコ』

――なるほど、なぜその映像にしたのか、ちゃんと理由や意図を考えながら制作することが大事なんですね。最近公開された山田さんの最新作、水曜日のカンパネラ「松尾芭蕉」を拝見したんですが、「松尾芭蕉」「プリウス」というキーワードと、山田さんやボーカルのコムアイさん独自の世界観が見事に融合されていて、現代の最先端をゆくビジュアルの隙間に過去の時代の流れを垣間見るという、とても不思議な感覚に陥りました。過去と現在をつなぐ今回のMVの構想はどのような意図のもと練られたのでしょうか?

松尾芭蕉というタイトルから、「旅」をテーマにした映像を作りたいなと思いました。
歌詞にも出てくる奥の細道っていうキーワードがそのままモチーフになってるし、「古池や 蛙飛び込む 水の音」っていう有名な松尾芭蕉の俳句のように、蛙が飛び込む水の音を聞くぐらい、何か感覚を研ぎ澄ませないと見えてこない景色が旅にはあると思ったんです。過去と現在を繋ぐ人生観そのものが旅だとも思っているので、そう言って貰えるととても嬉しいですね。

――「松尾芭蕉」では、味気ない工場の灰色に映えるカラフルな光や、コムアイさんが漂う水中の青など、鮮やかで思わず目を惹かれてしまう色使いがとても印象的でした。色彩に関してはどのような点にこだわっていらっしゃったのでしょう?

究極を言うと、景色ってその時の気分や条件によって見え方が変わってくるので、「人生の旅」みたいなテーマにはいろいろな色や空間、時代があってもいいよなと考えて制作していました。それが照明や美術の色彩表現とリンクしています。

――なるほど、「人生の旅」がテーマの一つになっていたんですね。「人生」という大きなテーマを据えた今作において、特に制作する上で気をつけたのはどのような点でしたか?

当たり前なんですが、人生っていろんな事がありながらも、一繋ぎで成り立っているじゃないですか。だから、どんな突飛なシーンでも絶対1カットに見えるよう繋いでやろうって思いながら制作していました。なので、あらかじめCG上でシュミレーションしてから撮影に挑んだり、今までになく準備にこだわれたのが良かったですね。とはいえ、そのせいでポスプロが大変すぎてヤバかったんですが、、、(笑)。

『松尾芭蕉』

――スタイリッシュなのに冷たさがなく、すごく落ち着いていて心地よさを感じる山田さん独特のトーン(色調)が僕はすごく好きなんですが、カラーグレーディングをする際、どういったところにこだわっていらっしゃいますか?

グレーディングって、撮影したものを自分の映像世界に落としこむ、一番分かりやすい手段で、どうしたら見ている人がその作品の世界に入れるか、一つの世界を映像のなかでどう描くかっていうのを決める作業なんですよ。作者の意図がもろに反映されるのがトーンなので、僕はグレーディングを一番大事にしていますね。

もちろん好きなトーンをもっと突き詰めていきたいし、欲を言えば、デジタルだからできるグレーディング作業っていうところに行き着きたいです。デジタルノイズとか、わざといろんなグレーディングを組み合わせるとかはまさにそうですよね。ただノスタルジックなものを目指すっていうよりは、そういうフィルムにはできない、デジタル作業だからこそできる新しい表現を少しずつ探っていきたいです。

――最近は「何でもフィルムで撮ればいい」みたいな流れがありますが、そうではなく、今だからこそ敢えてデジタルの表現を追及していこうとされているんですね。

厳密にいうとフィルムって、これから消えていく存在だからリアルじゃないですよね。もちろんフィルムのノスタルジーな感じとか大好きなんですが、リアルを捉えるなら絶対iPhoneで撮るべきだと考えている自分もいるんです。だから僕は学生時代、iPhoneでPVを撮ったりしていました。

――山田さんは普段、どんなグレーディング機材を使っていますか?

L’espace Vision(レスパス・ビジョン)というポスプロ会社に、Film Masterっていうグレーディング機材があって、僕は毎回それを使って作業してますね。でも場合によってはDaVinciも使うし、超低予算でやりたいときはAdobe Premiere Proを使うこともあります。

グレーディングの機材というと切りがないほどあるんですが、たとえ作業をする人が変わっても必ず同じ環境でやることが大事なんですよ。だから基本は、同じポスプロの同じ部屋、同じモニターで作業をする。メーカーが変わると、モニターの設定から色温度設定まで全て変わってしまうので、どこに自分の目の基準を置くかっていうのには、すごくこだわってますね。

――最近はYouTubeのような動画投稿サイトの進展にあわせて数多くのMV、PVが溢れるようになりましたが、そのなかで他と差別化した作品を制作していくために工夫していることはありますか?

ちゃんと自分というフィルターを通して、一つの世界観を提示するっていうことですかね。「山田智和」っていう人間のなかで、その曲をどう消化するか。フィルター自体は人によって絶対に違うので、そこを通せば自然に自分色が出て、他と違うものができると思います。

――逆に作家性を排除しなければいけない映像作品もなかにはあると思うんですが、そういった場合はどうされているのでしょう?

そうですよね。正直いうと実際は、作家性って求められることのほうが少ないですからね。特に広告の仕事では、作家性とは別の役割を求められることが多いので、作家性を出すか出さないかっていうのは、案件ごとに意識してジャッジしています。

ただ、水曜日のカンパネラやサカナクション、Base Ball Bearみたいなアーティストの方で、僕の作家性を求めてくれる人たちもいるので、そういう人たちは大事していきたいし、もっと一緒に仕事がしたいですね。

――ちなみに、山田さんの作品には最近「電話ボックス」がよく出てくる気がするんですが、山田さんのフィルターに「電話ボックス」はどう写っているのでしょう?

自分では意識してないんだけど、なぜかよく出てきちゃうんですよね(笑)。なんでだろう。みんながケータイを持つようになった今、「電話ボックス」っていらない存在であるはずなのに街には必ず置いてありますよね。なぜかすごく物語を感じるんですよ。

おそらく、たくさんの人がいるなかに存在しているパーソナルな空間がすごい好きだからかもしれません。感覚的にいうと、ヘッドフォンして街を歩くのが気持ちいいっていうのと似ていて、雑踏のなかにいるにも関わらず、そこだけ隔離されて、自分の空間が成立しているっていう状態に惹かれる。だからタクシーもすごく好きですね。やっぱりそういう空間が、自分にとっては面白い世界を表現しやすい場所なのかもしれません。

――サカナクションの『years』にもタクシーが出てきてますよね。僕は、タクシーの窓越しに山口一郎さんが外を眺めているカットが大好きで、タクシーに乗るときにいつも思い出してしまいます。

それ、すごく嬉しいですね(笑)。『years』に出ている女の子、るうこちゃんっていうんですけど、見た人が日常の中に思わずるうこちゃんを探してしまうような、そういうリアリティのある作品にしたかったんです。普段みんなが見ている風景をHACKするというか、現実から少しだけずらすっていう表現にすごく面白さを感じていて、根底にはそれがテーマとしてあるんですよね。

ネットが普及して、バーチャルな世界が当たり前の存在になっている今、僕はバーチャルが現実世界をどんどん侵食していく流れを感じています。だから水曜日のカンパネラのライブ演出をしたときには、MVの世界観をそのままライブで再現しました。ライブという現実と、MVというバーチャルをつなげることで日常をHACKする。そうやって相対的に可能性が広がっていくのはすごく面白いですね。

『years』

――山田さんはお仕事のほかに、自主制作も積極的に行っていらっしゃいますが、お仕事と自主制作はどのように両立されているのでしょう?

どっちも大事ですよね。仕事は自分の幅を広げるし、素晴らしい人たちに出会えるから絶対にやるんだけど、そこからこぼれてくる自分の感情とかアイデアを自主制作で描いている感じです。

これはもしかしたら僕だけかもしれないけど、一生懸命に生きてないと、やりたいことが分からなくなってしまう気がするんですよ。忙しければ忙しいほど、やりたいことが増えいく。だから仕事が忙しいのは、むしろありがたいです。

――山田さんは仕事のなかに、新しい創作のヒントを見つけているんですね。

やっぱり仕事をするということは社会と接することなので、現実世界で起きている問題を考えるベースになるんですよね。どこから社会を見るかっていうのが、創作の上ではすごく大切な気がします。だから何でもいいんですけど、働くことは大事ですね。

―山田さんは主にディレクションのお仕事をされていますが、ディレクターに必要な能力はなんだとお考えでしょうか?

うーん、やっぱり自分のアイデアを周りの人に面白いって思わせることだと思います。そして自分のやりたいことに賛同してくれる人をどれだけ集められるかだと思いますね。

――人を巻き込む力が大事ということですね。山田さん自身が監督をするときに大切にしていることはなんでしょう?

被写体を好きになること。あとは予定調和をいかに超えていくかですね。もちろん準備は入念にするんですが、事前に想像していたことをただ再現するだけでは面白くない。コンテとか企画書を越えるような奇跡の瞬間を現場でどれだけ作れて、それに自分がどれだけ反応できるか。それが一番大事だと思います。

――これからも映像に携わっていく身として、山田さんはどのような監督になっていきたいと考えていらっしゃいますか?

MV、CMだけにとどまらず、映画やドラマ、空間演出みたいにいろんな分野と広く関わっていきたいですね。映像を中心にして分野を横断していける存在になりたいです。

あとは、映像が主役となる場面をもっと増やしていきたいですね。僕はもっと映像にいろんな表現があってもいいはずだと思っているので、映像作家のための映像もアリだと思うんですよ。だから新しい表現にどんどんチャレンジして、いろんな可能性を探っていきたいです。

――映像作家のための映像というのは、どういうものなんでしょう?

MVだったらまず曲があって、CMだったらまず広告代理店の企画があって、そこに映像を付けてくださいってお話がくるのが普通の流れですよね。でも僕は、それを全く逆転させた映像があってもいいんじゃないかなと思うんですよ。ビジュアル先行というか、まず作りたい映像があって、あとからそこに音楽とか広告をのせていく。そういう映像が日本にはあまりないので今後トライしてみたいですね。

――すごく面白そうですね。今後のご活躍がますます楽しみです!山田さんにとって映像とはどのような存在でしょう?

いろんなものをつないでくれるもの、でしょうか。

映像を作ると、アーティストやカメラマン、照明さん、美術、ヘアメイク、スタイリスト…etc…みたいに、いろんな面白い人たちとつながることができる。さらに作った映像を見てもらうことで、視聴者とつながることができる。そして、そこから新しい何かが生まれて、また次の出会いにつながっていく。

さらに、例えば学生時代のバイトしていた経験とか、昔いじめられていた記憶、浪人してすごく孤独だった時代とか、過去は人それぞれあると思うんですけど、映像を制作することで、それらが全て消化されて1つのテーマになりますよね。そうやって過去と現在もつながっていくんですよ。

だから映像って、縦横無尽にいろんなものをつないでくれる存在なんだと思います。

――最後に学生へ一言、メッセージをお願いします。

今やりたいこと、やらないと気が済まないことをなるべくやるようにすることだと思います。学生版があるから機材も安く済むし、たくさん動いて、作りたいものをたくさん作っていれば、自ずと上手くなると思いますよ。

映像をやりたいんだったら、とにかくiPhoneで撮りまくって制作しまくる。そうすると、あるときから自然に作ることがサイクルになって、作るという行為が次の制作の動機と理由を必然的に生んでいくようになるんです。こうなると楽しい。最初はキツイですが、学生のうちにサイクルに乗れたら強いと思います。

 

***アシスタント募集のお知らせ***

今回ご登場いただいた山田智和さんは、やる気に溢れるアシスタント(学生可)を募集しているとのこと。
山田さんのもとで働いてみたい!という方は、以下連絡先より奮ってご応募ください!
http://tomokazuyamada.com/#contactWrap

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