そこはかとなく好奇心を刺激するクリエイターの秘密基地。

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今、美大生が会いたい 僕らの師匠【ディレクター・関 和亮】

      2016/08/23

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現役美大生が「いま会いたい、僕らの師匠」と直球で対談する、最高にクールなクリエーターズ・インタビュー。今回ご登壇いただいたのは、Perfumeやサカナクション、OK Goなど名だたる人気アーティストのMVを数多く手がけ、常識にとらわれない斬新なアイデアで人々を惹きつける日本屈指のディレクター、関和亮さんです。(企画・編集:丸山亜由美、執筆:坂口文華、インタビュー:軍司拓実)

関和亮:ディレクター

1976年長野県小布施町出身。1998年よりooo(トリプル・オー)所属。2000年より映像ディレクターとして活動を始め、2004年よりアート・ディレクター、フォトグラファーとしても活動。PerfumeのMVおよびアートワーク全般のほか、数々のMV、CM、ショートムービーなどを手がける。サカナクション「アルクアラウンド」MVにて第14回文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門優秀賞を受賞。

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――幼少期はどのように過ごされていましたか?

長野の田舎に育ったどこにでもいる普通の子供でしたね。小学生の頃は野球をやっていて、父親が当時は高価であっただろうハンディカムで試合の様子や投球フォームなんかを撮影してくれていました。

中学生の頃には、そのハンディカムで友達とドラマや映画のパロディ映像なんかを撮って遊んでいましたね。それがきっかけで、映像を意識するようになった気がします。映像それ自体に対してカッコイイとか面白いって思っていたわけではなく、遊びの1つとして、ゲームをするのと変わらない感覚で映像に触れていました。

高校生になると洋楽をよく聞くようになって、深夜テレビを見るようになりました。長野の田舎に住んでいたので、音楽の情報を得るには深夜テレビを見るしかなく、「BEAT UK」や「ミュージックトマトJAPAN」なんかを、夜な夜な親の目を盗んで見ていましたね。そこで初めてミュージックビデオの存在を知って、自分もこんなものが作ってみたい、こういう仕事に携わりたいって思うようになりました。

――その後、浪人して入学した大学を3ヶ月で辞めて映像の道へ進んだそうですが、何かきっかけになることがあったのでしょうか?

大学で勉強したい分野があったんですが、いざやってみたら大学に馴染めなくて、「これって本気でやりたいことだっけ?」って疑問に思ってしまったんですよ。もともと大学を卒業したら映像の仕事をしたいと思っていたので、だったら早めにそっちの方向へ進んだほうがいいだろうと考えて大学を親に内緒で辞めました。

そのときは何の当てもなかったんですが、アルバイト先の店長さんがたまたま映画監督さんと友達で、僕のことを紹介してくれたんですよ。それがきっかけで現場へ行くようになり、映像の道に進み始めました。

――大学を辞めたことが今のキャリアに繋がるきっかけになったんですね。

まあ、結果論でしかないですけどね。今となって思えば、大学にちゃんと通って、もっといろんな人と遊んだり、旅をしたり、変わったバイトをしてみたり、そういう学生にしかできないことをやっておけばよかったなと非常に思います。

社会人になったらできないことって本当にいっぱいあるんですよ。特に時間がないので、じっくり勉強もできない。せっかく4年間も時間があったんだから、何か1つでも専門分野を勉強しておけばよかったと後悔しています。

――この人の作品を見ていると刺激がもらえるっていう方はいますか?

僕、『スラムドッグ$ミリオネア』とか『トレインスポッティング』の監督をしているDanny Boyle(ダニー・ボイル)さんがすごく好きなんですよ。彼はトップレベルのヒットを飛ばしながら、実験的な作品も手がけていて、御歳60のベテランなのにずっと新しいことに挑戦し続けているんですね。そういったチャレンジ精神旺盛なところを、すごく見習いたいです。

――関さんは縦動画を早くから取り入れたり、ドローンを撮影に組み込んでいったりと、自らの表現を実現させるため最新技術をチャレンジングに取り入れていらっしゃいますよね。その技術を仕事で使うか否かは、どのように判断しているのでしょう?

自分のなかで、ある程度やりたいことが実現できそうだっていう確信が生まれない限りは踏み切らないですね。もちろんそこに至るまでには、本当にその技術が使えるのかテストしたり、企画を練り込んだり、時間をかけて入念に準備しています。

やっぱり仕事なので、成功する可能性が五分五分だったら使いません。クライアントさんがいて、予算や締切りがあるなかで、「やってみたけどダメでした」じゃ通らないですからね(笑)。だからチャレンジングに見えて、実は最初からゴールが見えているんです。さすがに天気とか、当日のみんなのテンションとかは伸るか反るかの運任せなんですけど(笑)。

――記憶にあるなかで、当初の予想以上にすごく良いものができたっていう作品はありますか?

やっぱりOK Goの『I Won’t Let You Down』ですかね。撮影期間3日のうち2日間はずっと天気が悪くて、もう数え切れないぐらいリハーサルを重ねていたんです。ようやく3日目に晴れたんですが何回も撮り直して、OKテイクが出たときにはもう夕方でしたね。だから今見返してみると、写っている時計が5時過ぎを指しているんですよ。これでダメだったら、あと1時間で日が暮れるっていうヒヤヒヤな状況のなか、まるで狙っていたかのように夕日が綺麗に差し込んできて、奇跡的に美しいテイクが撮れたんです。あれは本当に素晴らしかったですね。

――リハーサルやテストを入念にするということですが、普段は一つの制作にどれくらいの時間をかけているんでしょうか?

OK Goの『I Won’t Let You Down』に関していえば半年かかってますね。でも普通のMVだったら、お話をいただいてから1週間前後で企画をプレゼンして、その後2週間で撮影、そして2週間くらいで仕上げるっていう流れで進めることが多いので、1ヵ月半から2ヶ月くらいですね。あとはリハーサルをたくさんしたいとか、編集に時間をかけたいとか、それぞれの企画に合わせてプラス何週間か伸びることもあります。

――大規模な撮影が多いにも関わらず、制作期間が意外と短くて驚きました。

やっぱり期間を詰めて制作しないと、どうしてもお金がかかってしまうんですよ。制作費の大半は人件費なので、たくさんの人を使うときほど、1日撮影が伸びただけでコストが倍になってしまうんです。限られた予算のなかで制作するので、そう長くは時間をかけられないんですよね。

――なるほど、コストとの戦いでもあるんですね。

そうですね。でも最近は撮影機材費や編集費がすごく安くなっているので、まだ昔よりはやりやすいです。それに今はパソコンやスマートフォンで映像を見る機会が多くなっているので、高価なプロ機材を使って画質にこだわった撮影をするより、もっと柔軟に、それこそiPhoneとか小さいカメラも使いながら、いろんな画を撮れることのほうが大事になる場面も増えています。

――関さんの作品はアイデアにこだわっているものが多いですよね。なかなか最初は自分のアイデアが本当に面白いのか自信をもてないことが多いのですが、関さんはいつもどのようにアイデアをブラッシュアップしていらっしゃるのでしょう?

まず企画を立てた段階で、自分の経験則から面白くなりそうだなって思えるものは押し進めます。でも最終的には周りにいるスタッフに意見を聞いて判断しますね。やっぱり他の人から見たらどう感じるのかって自分では分からないので、周りに聞いてみて50%くらいの人が面白いと言ってくれたら「これはいける」って思うようにしています。だから自分の感覚を信じつつも、周囲の意見を聞くことを大切にして制作していますね。

――スタッフさんの意見を積極的に取り入れながら、アイデアをブラッシュアップしていくんですね。

スタッフだけでなく、演者さんにも実際やってみてどう感じるか、よく聞きますね。やっぱり演じている本人が違和感をもっていると、それが映像にも出てしまうので、ちゃんと納得して演じてもらえるよう、本人の意見を聞きながら進めていきます。

――個人的に好きな作品としてASIAN KUNG-FU GENERATION(アジカン)の『踵で愛を打ち鳴らせ』があるのですが、上からの画が中心であったり、フロントマンの後藤正文さんが踊っていたりと、アジカンのMVの中ではかなり珍しい作品だと感じました。これはどのようなアイデアから生まれたのでしょう?

最初、後藤君と打ち合わせをしたときに、本人が「例えば、僕が踊るとかどうですかね。」ってボソッと言ったんですよ。それがきっかけで「面白いね!じゃあ踊ろうか。」って盛り上がったんですけど、いざ現実的に考えてみたら「ダンサーでもない後藤君が踊るってどうなんだ?」って考えちゃって(笑)。

結局いろいろ考えた末に、後藤君が踊っている姿を正面からではなく、いろんな角度から撮ったら面白いんじゃないかっていうことで、カメラクレーンを使って撮影することになりました。カメラクレーンって1つの軸を中心に時計みたいにグルグル動かせるんですが、そこから時計にちなんで1日の流れを一貫したカメラワークで追っていくっていうテーマになったんですよ。

1つ中心となるテーマが決まったら、あとはそれに肉付けしていく感じで人文字や傘を使ったダンスなど細かい演出を付け足していって、どんどんにぎやかな楽しい作品になっていきました。

――MV全体に豊富なアイデアが散りばめられていて、何回見ても飽きませんね。

僕自身ちょっと飽きっぽい性格なので、映像をずっと見ていることができないんです。だから自分が映像を作るときは、次の展開が気になるような作品にしたいという思いがあって、最後まで飽きない演出とか、多くの人に見てもらえる方法とかを常に考えながら制作しているんです。

――もう一つ、amazarashiの『空っぽの空に潰される』では、今までアニメーション中心のMVからガラリと変わって実写になり、荒々しいようで美しいダンスと言葉の融合に大きな衝撃を受けました。これはどのように制作されたのでしょう?

まず始めにamazarashiのキービジュアルであるテルテル坊主のキャラクターを実写でどう表現しようか考えて、身体的にいろんなことが表現できるダンサーさんを使おうということが決まりました。

でもただ踊るだけじゃつまらないし、amazarashiの特徴である強い歌詞を出していきたかったので、モニターを使って何かできないか考えたんです。そこから「モニターの世界の中と外」っていうテーマにつながって、あの世界観が生まれました。

ちなみにあのダンス、実は全て即興で踊ってるんですよ。普通MVの振り付けって、事前に形が決まっていることが多いんですが、このときは即興ダンスをする方にお願いして、曲のテーマや歌詞に合わせつつ、その場のテンションで踊ってもらいました。だから撮るたびに違う内容になって、撮影する側としてもすごく面白かったですね。

――映像制作をしていると、なかなか忙しさで生活が不規則になりがちだと思うのですが、関さんはご家族をもたれて、お仕事のやり方に何か変化はありましたか?

やっぱり家庭の時間も必要ですし、守るものができて自分一人だけの体ではなくなったので、あまり徹夜はしなくなりましたね。

僕はもう若くないので(笑)、やっぱり体調管理のためにも生活は規則的にならざるを得ないですよ。どうしても仕事の都合上、朝早くから夜遅くまで撮影が続いてしまうこともあるんですが、基本的な生活スタンスは確かに変わりましたね。

――今後、映像以外に何かやってみたいこと、挑戦してみたいことはありますか?

うーん、なんだろう・・・
多分やらないだろうけど、カフェのマスターとか(笑)。

目の前にお客さんがいて、直にその人とやりとりができるような仕事がしてみたいですね。今の仕事をやっていると、たまに「お客さんって誰だっけ?」って思うときがあるんですよ。

クライアントさんは確かにいるんですが、それはミュージシャンや企業であって、実質的な消費者はその先にいるんですよね。だから僕らは、自分の作品を実際に見てくれる消費者と直接関わることがないまま仕事をしている。

今ならYouTubeやSNSを通して見てくれた人の声を聞くこともできるんですが、やっぱり顔が見えないので、自分が誰のために仕事をしているのか分からなくなるときがあるんですよ。ミュージシャンだったらライブ会場にお客さんがいるので、この人たちに音楽を届けているんだって分かりやすいんですけどね。だからちゃんとお客さんの顔が見えて、直接お客さんとやりとりできる仕事にちょっと憧れますね。

――関さんの今後の目標はなんですか?

この仕事を最後までやり続けることですね。
やっぱり楽しいですし、やったらやっただけ成果につながる仕事なので、ガッツと「またやりましょう」っていう言葉があれば、やっていけると思います。

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――これから映像の世界へ出て行こうとしている10代や20代の若者が、活動していく上で意識すべきことはなんでしょう?

映像の分野だけに囚われないことですかね。
例えばMVばかり演出していると考えが固まる事もあると思うんですよ。
それは僕が若いときから思っていて、やっぱり映像プラスαで何かできることがあると強い。

僕の場合は、ありがたいことに所属しているOOO(トリプル・オー)がデザイン事務所なので、平面のデザインに触れるきっかけがもらえたんですね。だからデザインをしながら映像も撮るっていうスタンスになったんですが、やっぱり映像以外の知識があると仕事の幅が広がるんですよ。だから学生さんには、MVを作ることを最終的な目標として目指さないでほしいです。

――なるほど。あまり焦点を絞りすぎず、様々な分野に触れることで自分の幅が広がっていくんですね。

そうですね。ただ、やっぱり向き不向きがあるので、みんながみんなマルチに活動できるかっていうとそれは難しい。でも学んだ知識は絶対に役立つので、そこから枝葉が伸びて思わぬ方向に仕事が広がることはあると思いますよ。

例えば、もともとアートディレクターを目指していた人ならデザインに特化した映像が作れるかもしれないし、芝居物をやっていた人ならドラマ性のあるMVが作れるかもしれない。全く違う分野の知識が自分の持ち味になったりするので、あまり一つの分野に固執しないでほしいですね。

――最後に、関さんにとって映像とはどんな存在でしょうか?

映像は娯楽だと思います。
でも娯楽だと思ってもらうためには、見る人をちゃんと惹きつけなければならないので、作り手にとってはすごく難しいものなんですが、あると楽しかったり、いろいろ考えさせられたりするのが映像だと思います。僕にとってはこれが仕事になったので、人生を変えてくれたものでもありますね。

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