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今、美大生が会いたい 僕らの師匠【映像ディレクター・vivision 児玉裕一】

   

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現役美大生が「いま会いたい、僕らの師匠」と直球で対談する、最高にクールなクリエーターズ・インタビュー。今回ご登場いただいたのは、話題のCMやミュージックビデオを数々手がけていらっしゃる日本屈指の映像ディレクター、vivision代表の児玉裕一さんです。

(企画・編集:丸山亜由美、執筆:坂口文華、インタビュー:軍司拓実)

vivision 児玉裕一/映像ディレクター

 
1975年生まれ。映像ディレクター。東北大学理学部化学系卒業。卒業後、広告代理店勤務を経て独立。以後フリーのディレクターとしてCM、MVなどの演出を手掛ける。2006年より「CAVIAR」所属を経て、2013年9月「vivision」 設立。

vivision:http://www.vivision.tv/

――児玉さんは学生時代、どのような活動をしていらっしゃったんでしょうか?

大学生のときにマッキントッシュを買って、試しにそれでデザインの真似事みたいなことをやってたんですよね。僕はちょうどその時、東北大学理学部の化学科にいたんですけど、周りにデザインをやってる人が結構いたんですよ。でも、映像をやってる人は、まだあまりいなかったから「じゃあ、自分は映像をやってみよう!」って思って、試しに友達のバンドのミュージックビデオを作ったりしてましたね。

あとは、友達とTシャツ作ったり、ロゴをデザインしたり、いろんな書体を集めたり、自分たちで書体を作ってみたり、とか。

――東北大学を卒業後、まず広告代理店に入社されたと伺ったんですが、なにかきっかけがあったんでしょうか?

大学生のときに、今はもうないんだけど、当時『広告批評』とか『デザインの現場』っていう雑誌があったんだよね。それを仙台で読んでいたんですけど、広告ってなんかすごく面白いことやってるなって感じて、そこからただ漠然と“かっこいい広告の世界に行きたいな”って思ったんです。

それと同時に、当時Beck Hansen(ベック・ハンセン)とかBjork(ビョーク)とかがすごく面白いビデオを作ってた時だったから、ミュージックビデオにもすごく興味があった。

でも、どういう進路を進んだらその世界に行けるか分からなかったんですけど…広告批評を読みながら、まずは広告業界に行けばそういうことができるんじゃないかって思って、大学卒業してから広告代理店に入りました。そこでは「媒体部」っていう部署に配属されて、ざっくり言うと新聞とか雑誌とかの広告スペースを仕入れてくる仕事をしていたんですけど、1年くらいやってたら「なるほど、広告ってこういう風にお金を生み出してるんだ」っていう仕組みがなんとなく分かってきて、自分のやりたい「制作」とは違うんだなって気付いたんです。

それで、広告代理店を辞めてフリーになりました。一回仙台へ戻って、先輩のやり方を見よう見まねしながら、仙台のテレビ番組とかCMとかを作ってましたね。

――なるほど、では広告代理店に入ってから路線を一回修正したんですね。

そうですね。とにかくCMでもミュージックビデオでも、なにか自分で制作したかったんですよね。

児玉さんの新作CM(かんぽ生命「それは人生、わたしの人生」)

――児玉さんが影響を受けた映像作品って何かありますか?

小さい頃から『トロン』が大好きでした。それと、科学館にあったイームズの映像作品 『POWERS OF TEN』もずっと見てましたね。昔から、科学的なものがすごく好きでした。その未来感とか、見たことがない世界にワクワクするんですよ。

あとは、アメリカのポップで陽気な感じも好きで『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『ゴーストバスターズ』『グーニーズ』とか今でも大好きです。

――当時、ミュージックビデオはご覧になっていましたか?

それが、ちゃんと見られなくて(笑)当時は今みたいにYouTubeとかなかったから、MTVを受信してる友達に頼んでVHSにコピーしてもらったり、VHS屋みたいなところで買ってきたりして見てました。

だから、ビデオを見るのがすごく大変でしたね。雑誌に載ってる1コマだけを見て、どんなミュージックビデオなんだろうってよく想像してました。

――児玉さんは普段、どのように映像を制作されているんでしょうか?

例えばCMだったら、その企画についてぼんやり考えながら、いろんな表現の可能性を頭の中に浮かべておくんです。もうちょっといい案があるんじゃないかって、あらゆる案を頭からひねり出す感じですね。で、コンテを作るときにまとめて1個の形にする。

あとはコンテを作りながら、細かい部分、いつ誰がどこでどう動くかとか、どういうセットが必要なのかとかを詰めていく感じかな。

やっぱり絵コンテがないと、他の人に自分のイメージがうまく伝わらないんですよ。例えば「椎名林檎が東京タワーから飛び降りるんですよ」って突然いわれても、意味が分からないでしょ?(笑) だからうまく説明して、いかに「それ、もしかしたら面白いかも」って思わせるか。そのためには絵コンテが必要なんですよね。

出演者からもらえる時間も、撮影に使える予算も限られているので、ゆっくり撮影してる時間がないんですよね。だからコンテをしっかり作っとかないと、撮影のときに撮りこぼしちゃう可能性がある。コンテの段階で細かい部分まで決めとかないと、絶対に終わらないです。

――ミュージックビデオを制作するときも、同じように?

そうですね。ただ、ミュージックビデオの場合は映像の展開と曲の展開がカチッとはまらないと、なんか腑に落ちないんですね。だから、曲をずっと聞きながら、自分の中に思い浮かべた映像表現と、曲の流れや雰囲気がピタッとはまる瞬間を待つ。もう自分で想像しただけで心にグッとくる映像が思いついたら、安心してコンテが書けますね。

あと、一言で「こういうビデオだった」って表現できるかどうかはすごい気にします。だから、最初は「一言でいうと、どういうビデオなんだろう?」って考えて、そこから内容を膨らませていく。

見たあとに残る気分、感動するのか、すごい笑えるのか、最後やられた!って思わせるのか。その印象を最初に決めたいんですよね。それが曲の印象にもなるから。このビデオを見た人に何か思って欲しいんですよ。そのほうが、見た人の心に引っかかるじゃないですか。

僕はミュージックビデオもCMも広告だと思ってるから、ビデオをきっかけにCDとか商品を手にとってもらえるような、そういう結果に繋げていきたい

――児玉さんの作品には、CGやアニメーションなど様々な技術が違和感なく、ごく自然に組み合わされている印象を受けるのですが、なにか意識していることはありますか?

特に意識していることはないけど…この演出をうまく表現するために必要だから使ってるって感じかな。

――水曜日のカンパネラの『ラー』にある、金の泉の水がパシャッて跳ねるシーンはCGだと思うんですが、ちゃんと見ていなければ気付かないくらい自然に作られていますよね。


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もし、実際にああいう液体の池を作ろうとすると大変なんですよ。金色のインクを水に混ぜるとすると、底にたまっちゃうんです。表面も汚くなっちゃうし。とはいえ、うす―く溶いちゃうと、あんなキラキラした感じにはならない。だから、CGはほんと苦肉の策でもあるんですよね(笑)でもリアルな液体をCGでつくるのもおんなじくらい大変なことなんですけどね。

――東京事変の『ただならぬ関係』では、メンバーのクローンみたいな人たちがたくさん行進しているシーンがありましたが、あれはどういった意図で制作されたんでしょうか?


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あの曲が東京事変の最後のビデオになります、と聞いていました。だから、東京事変の魂たちが今までのライブツアーで着てた衣装で行進しながら、みなさんにご挨拶してる、みたいなイメージで作りました。

――児玉さんのミュージックビデオには、丁寧にクレジットが入った作品が見受けられますが、なにかこだわりがあるのでしょうか?

こだわりというか、僕、昔からクレジット入れるのが大好きなんですよ。エンドロールを作るのが大好きで(笑)監督からスタッフに対して「僕は、あなたたちにすごく感謝してます」っていう気持ちを込めて入れてます。ほんとは時間に余裕がないとキツイんだけど、ちょっと長い映像のときはクレジット入れたくなっちゃうね。

――大きな企画になればなるほど、制作にたくさんの人たちが関わってくると思うのですが、その中心となるディレクターにとって必要なものとはなんでしょうか?

うーん…「人を巻き込む力」に尽きるんじゃないでしょうか。僕はディレクターとして、みんなで一緒に作りたい!って思わせることができる企画を考えられるようになりたいな、といつも思ってますね。みんなで作ってるっていう意識があって、しかも、それに携わった人がみんな「あれはよかったね」って納得できる作品を作っていきたいです。

――人を巻き込んでいくために、なにか気を付けていることはありますか?

自分が面白いと思えないものは、たぶん他人も面白くないだろう、とは思ってますね。誰よりも自分が盛り上がれないと説得力が生まれませんよね。

――最近、VRや360度映像など新しい技術が次々に出てきていますが、そういった技術についてはどうお考えでしょうか?

それはそれで、すごくエキサイティングだと思いますよ。新しい技術が入ることで、まだ見たことがない世界を作れたら、それは楽しいですよね。

僕はもともとVJとかライブの演出もやってたんですけど、VRとか360度映像はどちらかというと、そういうライブの考え方に近いのかな。その現場の時間軸で物事が起きる感じっていうかね。やっぱり時間の作り方とか、普通の映像作品とは違う考え方が必要なんじゃないかとは思いますね。興味はすごくあります。

児玉さんの新作CM(キリン メッツ「登場」)

――制作に関して、児玉さんが常に意識して実行していることって何かありますか?

うーん、人の意見に耳を傾けることかな。まあ、カチンとくることもあるけど、一歩謙虚になって考えてみようとしてますね。やっぱり、自分だけじゃ考え付かなかったこと、考え付けなかったことってあるじゃないですか。そういうのをもっと取り入れたい。

自分の手癖からできる作品はいつでも作れるわけだから、今はそうじゃないものを作りたいなと思ってます。

――児玉さんにとって映像とはなんでしょうか?

そうですね…わりと昔から思ってることなんだけど、疑似体験装置っていうか、未来とか過去、誰かの人生であるとかを体験できる装置なんだと思いますね。それがジェットコースターのコースを走ってるみたいなイメージかな。

いつも映像を作るときは、ジェットコースターのコースを設計しているイメージで作ってるんですよ。ここで始まって、ここでグルグル回転して、一回宙返りして、最後止まった、と思ったらもう一周いく、みたいな流れを作っていく感覚かな(笑)それが15秒なのか30秒なのか3分なのかっていうイメージですね。

見ている人に、そのジェットコースターに乗り込んでもらって、自分が想像してたコースを体験してもらうみたいな感じ

インタラクティブなコンテンツとかすごい流行ったけど、そうじゃない良さもあるんだよね。やっぱりジェットコースターって次に何が来るか分からないから面白いわけじゃない?このあとどうなるのか、自分でコースを選択できない、そういう面白さが、やっぱり映像にはあるんじゃないかな。

――最後に、映像の世界を目指している学生に対して、一言メッセージをお願いします。

一つ映像作るだけでもすごく大変です(笑)でも逆に言うと、すごく苦労して作った映像は面白い。苦労した分、複雑で面白いジェットコースターになると僕は思ってる。だから頑張ってください!

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