そこはかとなく好奇心を刺激するクリエイターの秘密基地。

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今、美大生が会いたい 僕らの師匠【ディレクター/アートディレクター /アーティスト・YKBX 】

   

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現役美大生が「いま会いたい、僕らの師匠」と直球で対談する、最高にクールなクリエーターズ・インタビュー。今回ご登場いただいたのは、世界から注目される新進気鋭の映像ディレクター、YKBXさんです。

(企画・編集:丸山亜由美、執筆:坂口文華、インタビュー:軍司拓実)

YKBX/ディレクター/アートディレクター /アーティスト

 
各種映像作品のディレクションや制作に加え、イラストレーション、グラ フィックデザイン、CG、VRなど多岐にわたって活動する映像ディレクター/アートディレクター/アーティスト。amazarashi、酸欠少女さユりなどのトー タルアートディレクションを担当し、国内外から高い 評価を集めている。初音ミクによるボーカロイドオペラ「THE END」では、全てのビジュアルディレクション・ 演出・映像ディレクターを務める。安室奈美恵・GUCCI・VOGUEによるホログラムファッションショーやソチオリンピック公式オープニング映像、現 国立競技場クローズイベント映像演出や世界初となる OculusLiftを駆使した倖田來未のVRミュージックビデオなども手がけ、より一層活動の幅を広げている。

YKBX:http://ykbx.jp/

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――YKBXさんが映像作家になったきっかけを教えてください。

僕、実はかなり特殊な経歴なんですよ。今もわりとそうですけど、僕の世代では色んなメディアやインターネットのインフラが構築されたり、音楽の配信がはじまったり、YouTubeが普及したりとか、既存のあり方から変化していくタイミングだったんです。だから、ストレートに映像をやりたかったんですけど、そのまま映像業界に飛び込むっていうよりは、その周辺の分野とか、自分の興味あるものをまず身に付けていきたいと思ったんですね。

それで、大学を卒業してから、やっぱり自分の必要だと思うスキルを現場で身に付けたいと いうのもあって、まずゲーム会社に就職して、インタラクティブコンテンツや、いわゆる技術的なもの、VFXとかCGとか演出・美術、実技的なものを勉強しました。

その後、渡米して映像表現的に自分のやりたい方向があったのでCMやMV/TVやコンセプトアートなどの仕事をしながら、国内の仕事も手掛けつつフリーランスとしても活動しました。そのときに、マス向けのデザインのロジックだったり、ハードウェアの設計も含めたインタラクティブなコンテンツをもっと掘り下げて勉強したいという思いもあり、任天堂に入って様々な大きなタイトルに参加しました。ここで吸収できたものも大きいと思います。

amazarashiに関しては、初期段階から色々と参画させて頂いていて、初期MVの内の1つ”夏を待っていました”あたりからの連作が国内外で様々な賞を頂き、そこから業界の方や海外のプロデューサーの方など色々なところから声をかけて頂いて、より幅広く仕事や新たなプロジェクトへ繋がっていきました。

―― なるほど。だからYKBXさんの作品には、他のどれにも似ない独自の雰囲気があるんですね。

そうですね。肌感覚でシーンが変わっていく事は感じていて、VFXでもアニメーションでも、僕はどっちかというと、自分でいろいろ設計して、ある程度突っ込んだことをやりたかったので必要なスキルセットを身に着ける必要もありました。

―― YKBXの特徴の一つとして、音楽アーティストのトータルアートディレクションを担当していることが挙げられますが、イラスト一個書くだけでも仕事になるレベルの世界で、ジャケットやアートワークからグッズ、MVにはじまる映像 作品など全てをディレクションしていくのはとても大変なことだと思います。どういったことをモチベーションにしてお仕事をなさっているのでしょうか?

やっぱり、他人ができないこと、自分にしかできないことをやりたいなぁと思っていたのと、新しいことをやらないと自分も楽しめないっていうのはありましたね。あとは、やっぱり新しい価値観を提示したいというのもありますね。

―― 音楽にもともと関心があったと伺っていたんですが、映像作家になる以前から音楽系の仕事に携わりたいという気持ちがあったんでしょうか?

そうですね。音楽はもうほんとにすごい好きで、小さいときはピアノをやっていたし、大学のときはバンドをやっていました。それに、やっぱり学生のときって、特に映像が好きな人はミュージックビデオとかにも影響を受けるじゃないですか。だから、そういうことはやっていきたいと自然に思っていました。

――YKBXのもう一つの特徴として、独特なタッチのイラストが挙げられますが、学生時代からすでにイラストを仕事として活かすことは意識されていたのでしょうか?

意識はしていましたね。ただ、このスキルのみでという感覚は全くなくて、あくまでも映像中心の考え方です。絵自体は小さい時から書いていたんですけど、実写だけではなく、CGやVFXを駆使したものとかアニメーションとかの可能性もいろいろ感じていて、自分の世界観を作っていきたいなっていう気持ちはありました。あとは、その時必要だったっていうのもあります。やっぱり書かないと自分の考えが確実に伝わらないっていうのがあって、コミュニケーションツールとしても必要に駆られてどんどんビジュアル言語の一環として絵を書いていましたね。

実際は映像以外の仕事も結構多いので、自分の中でも(アートディレクションや、キャラクターデザイン、グラフィックデザイン、イラストとCMやMVなどの映像の仕事)どっちを主体にしようかなって迷う時期もあったんですよ。ただ、自然と仕事がちょうどいいバランスになっていたり、その組み合わせで新しい仕事が産まれたりといった形で今に至るっていう感じです。」

――(実物の絵コンテを見て)これらの絵コンテは、最初の企画段階で出していらっしゃるんですか?

そうですね。わりとスケジュールがタイトなものが多いので、仕事の流れとしては、まずクライアントからお話をもらったら、すぐに企画書を出すんですよ。そこで大体の世界観とか方向性、コンセプトを出して、それが問題なければ次に絵コンテに入るんですね。そしてできるところから進めていきます。だから、これらの設定資料みたいなものは 企画書の段階で出す感じですね。たとえば、楽曲と合わせて自分の解釈を一回出す形で、こういう少年を主人公にしたいとか、こういう場面があったらいいかも、とか自分の考えをコンテで見せるんです。

僕はわりと絵を描くのが速いほうなんで、バッと一気に描いちゃうことが多いです。あとは基本、全部デジタルでやっていて、もう紙はほとんど使わないんですよ。だから、企画書を作りながらタブレットでコンテやアイデアを書いてどんどん組み込んでいく、みたいな感じでやっています。今見てもらっているのはamazarashiのコンテなんですけど、たとえば以前、安室奈美恵さんのミュージック ビデオと、グッチ(Gucci)の店舗のホログラムをやったときとか、実写のときでも、基本的にはコンテを書いて進めています。

実は、こうやってコンテを書いているから生まれる仕事もけっこう多いんですよ。たとえば、ホログラムとか新しいことをやるときも、やっぱりビジュアルを見ないとメーカーの方とかはイメージが湧きづらいので、絵コンテとセットで企画書を出すことによって「やりたい!」っていう方向に転換することが多いですね。

―― 「デヴィット・フィンチャー」の映画や「バンド・デシネ」を好んでいたと伺っていましたが、YKBXさんのイラストのルーツはなんですか?

実は以前、ちょっと変なトレーニングをしていた時期があって(笑)映画を普通に再生して、気になるカットを手元で模写しながら見るっていうのをやってたんですよ。めちゃくちゃ高速で書かないと追いつかないんですけど、これをやるとそれぞれのカットの分析ができるんですね。デヴィット・フィンチャーだけじゃないですけど、レイアウトのうまい人がどういう風にやってるのかっていうのを一回、自分で解析してみるんですよ。模写する必要まではなかったかもしれませんが(笑)

僕は、映画だけじゃなく、影響を受けているものがものすごくいろいろあって、 ほんと雑食なんですよね。 大学生のときは、大きい書店に行ってひたすらいろんなものを見たり買ったりしていました。写真も好きだし、ファッションとか、雑誌、マンガ、ゲームとかも好きですね。わりと見境なしにいろんなものを取り込んでいました

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―― そういえば、初音ミクの『THE END』では、ご自身で演出だけではなくキャラクターデザインや衣装デザインもされていましたよね。

『THE END』のときは、衣装を設計している途中でルイ・ヴィトンさんと一緒に進めることができて、当時のコレクションの衣装をミク用にデザインして頂き、素晴らしいコラボレーションができました。とても貴重な体験でした。

―― 『THE END』もそうですが、技術やメディアがどんどん進化していく時代の中で、やはり新しいことに積極的にチャレンジしていきたい気持ちがあったんでしょうか?

もちろん、そういう気持ちはあります。たとえば、一昨年にオキュラスリフトで倖田來未さんとVRミュージックビデオを作ったんですけど、それはタイミング的には世界初のものだったんです。試みとしてはすごくよかったと思います。

ただ、テクノロジーというか新しい技術って、最初は動いただけでも感動したりと興味がわく沸点は低いですが、やっぱり当然最後には中身の問題に回帰してくると思います。基本は、中身をどうつくるか、この技術が何に機能しているのか、いかに体感としても面白く作るかっていうところ。そこにプラスして、その技術を使わないとできない要素を入れていくっていうのが重要なんだと思います。

――YKBXさんがお仕事をする上で大事にしている部分はなんですか?

自分にしかできないこと、新規性のあることをなるべくやるようにしています。スタンダードな内容のものでも何かトライできる要素を自身で設けるなどといった事です。客観的に見て自分がドキッとしなかったらダメだなと思っているので、常に客観的な視点をもつようにしています。

―― これは僕自身の悩みでもあるんですが、映像をやりたい気持ちと、でも選択肢の幅も広げたいっていう気持ちがあって、いろんなものに手を付けてはいるけど全部が中途半端になってしまっているんですね。それで「君は結局なにをやりたいの?」っていう目で見られることもあって・・・。様々な分野の技術を学んできたYKBXさんは、どのように考えて動いていたのでしょうか?

これはすごく重要なことなんですけど、時代的に今って、わりと自由になんでもできるようになってきてるんですよね。だから、映像ディレクターといっても形にこだわる必要は本当にない。むしろ、こだわらないほうがいいと思う。これしかできないとか、これが得意だっていうのを絞る必要は全くないし、もうスキルセットの時代だと思うんですね。だから、僕は映像ディレクターっていう肩書きでやってるときもあれば、そうじゃないときもあるんですよ。そもそも、肩書きとかもこだわる必要はあんまりなくて、一番重要なのは、自分のパフォーマンスが一番活かせる環境を成立させることだと思うんですよ。そのためには全然迂回したっていいと思う。そして、気になる分野とか、身に付けたいスキルがあったら、実際に現場に行って習得したほうが全然身に付くと思います。

今って基本、終身雇用みたいな考えがもうないじゃないですか。必要ならいくらでも転職しちゃっていいし、嫌ならやめてもいいと思うんですよね。ただ、就職すること自体は全然悪いことではないと思うんですよ。むしろ凄く重要だし、色んな人の考え方に触れる機会だし、組織というもののあり方や、物事の流れ方など学ぶべき事は本当にたくさんあると思います。

気になるところがあったらどんどん行って、違ったら辞めればいい。極端なことをいうと、独立っていつでもできるんで、自分を客観的に見てブランディングすることが大事だと思います。将来、スキルセットと経歴はこうなっていたいっていうビジョンを描く。結果的に肩書きは後からついてくればいいと思う。そのほうがずっと強いと思います。

―― 学生のうちから大きく使われたいと思うと、やはり一つのことが飛びぬけてできたほうが呼ばれやすいのかもって、僕は感じていて、いろいろ手を出さないほうが良かったのかなってすごく悩んでいたので、とても今のお話は心に響きました。

その気持ちは、すごく分かりますね。ただ、目的で変わるとも思うんですよ。すごく分かりやすくいうと、たとえばVFXとかCGが好き、そっちでやりたいっていう人はシンプルに技術や得意なものを突き詰めればいいと思います。それはそれで圧倒的に強いですから。場合によっては学生時代から仕事をとっちゃっていいと思うし、海外に行って、有名スタジオとか目指して入っちゃえばいいと思うんですよ。

ただ、その道はその道でやりづらくなる事や、目指したい方向からそれることもある。全部欲しいっていっても難しいので。そこは何を自分が優先したいのか確かめる必要があります。形にとらわれたり、固執したりしないで柔軟にやっていく必要があると思います。

――YKBXさんが伝えたい、学生に対するメッセージがあれば、ぜひ伺いたいです。

そうですね….いろいろ伝えたいことはあるんですけど、仕事としてやっていくなら、ニッチな場じゃなくてメインストリームというかマスの感覚も意識したほうがいいと思います。分かる人が分かればいいみたいなスタンスも時にはいいんですけど、やっぱり使いにくいものは使いにくいんですよね。

僕の場合は、25歳くらいのときにフリーランスで仕事をしていて、ポートフォーリオとか見せたりしていた時に、「すっごくいいんだけど、使いづらい」っていう話をされたんですよ。当時は、何が使いにくいという言葉につながったのか、自分なりに解析して色々と考えさせられました。僕は、当時そういうことを言われたのが初めてだったんで、客観的な視点や自己ハンドリングする必要性に気づくきっかけの一つになったんです。

キャラクターとか世界観のデザインにもやっぱりロジックはあったりするし、いろいろ必要な知識やテクニックがあります。そういうのを真似する必要は全くないんですけど、考え方とか、スキルは身につけたほうがいいと思います。

これからみなさんは、自分の作品をいろんな人に見せる機会があって、たぶんあれこれ言われると思うんですよ。それで、イラッとくることもあると思うんですけど、他人の意見を冷静に受けとめて、なるほどなって思う癖も、たぶんつけたほうがいいと思います。客観的に見て、補正したほうがいいなって思うものは、したほうがいい。固執しすぎると、危ない。結局、使われない、世の中に出ていかないで終わっちゃう。そのへんのバランス感覚は意識したほうがいいと思います。

―― 横部さんは、どのようにそのバランスを意識して制作されているんですか?

客観視点ですが自分の中でこういうバランスが自分がお店だったらこういうブランドイメージが良いなとか、ショーウィンドウをディスプレイするように印象にバランスを作るようなイメージです。言葉にするのは難しいですが。

―― あまりニッチになりすぎず、いろんな人に面白さが伝わるようなものを なるべく意識したほうがいいということですね。

そうですね。一つのものに固執しても、自分のやれることをせばめちゃうだけなので、なるべく可能性をひろげていけるような事をしていきたいと思います。

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