今、美大生が会いたい 僕らの師匠【映像ディレクター/ アートディレクター・TAKCOM/ 土屋貴史】
2016/03/03
現役美大生が「いま会いたい、僕らの師匠」と直球で対談する、最高にクールなクリエーターズ・インタビュー。今回登場していただくのは、映像ディレクター/アートディレクターでいらっしゃるTACCOM/ 土屋貴史さんです。(企画・編集:丸山亜由美、執筆:伊川真以、インタビュー:澁谷武)
TACCOM/ 土屋貴史:映像ディレクター/アートディレクター
映像Director 、Art Directior。数十ヶ国のアートフェスティバルやギャラリーへの参加/作品招待等を通じて、国内外から高い評価を得る。活動媒体は幅広く、アウトプットのフォーマットも含めて新しい表現を探求している。特に高精細な画作りには定評がある。2013年「森ビル 六本木ヒルズ –TOKYO CITY SYMPHONY」(映像演出担当)カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバルCyber部門 SILVER受賞、ADFEST PROMO LOTUS/GOLD賞、D&AD AWARD Yellow Pencil受賞。2014年「ソニー銀行 ATM」交通広告グランプリ2014 デジタルメディア部門 最優秀部門賞受賞。www.takafumitsuchiya.com
–「TACCOM」という名前はどうやってつけたんですか。
由来は特にないんですが、自分の名前の頭文字を使ったのと、あんまり格好良すぎず、あと外国人でも覚えやすいようにしました。あだ名とかハンドルネームだったのですが、流れでそのまま呼ばれるようになってしまい、、、
–映像の道に進もうと思ったのはいつ頃ですか。
高校の夏に美大に入ろうと思った頃ですね。単純に今からデザイン学科に入るのは難しいよって美術の教師に言われて、映像学科だったら入りやすいよっていう話しだったので映像の道に進んだ感じですね(笑)当時映画や映像を用いたアート作品やライブ演出、当時のMTV等どっぷり映像に浸かっていたので、自然な流れでした。
–TACCOMさんの出身大学はどこですか。
出身大学は日大の芸術学部の映像学科映像コースですね。
— 日大の芸術学部に入学して、何かされていたことはありますか。
いや、大学の時とかはほんとに何もやってないですね。最初Macを買って、色々実験したりしてたぐらいです。Power Mac G3で色々映像を作ってたりとか、VJ(映像を素材としてディスクジョッキー(DJ)と同様の行為を行う者)の真似事をやってたりとかしてて。まあでも、大学時代はそんな何もやってなかったですね。
–当時の日大の映像学部ではモーショングラフィックはやっていたんですか。
その当時モーショングラフィックは、今ほど技術は発達してない頃だったんで、真似事はできるけどどうやってやってるのかなあっ感じでした。
–影響を受けた映像とかは何かありますか。
映像自体は元々高校の時から好きだったので、映画は日常的に大量に見ていたのですが、それ以外だと、例えばピーター・ガブリエルのツアーはロベール・ルパージュが演出をしていたり、ピンクフロイドのツアー、U2のZooropaやPopmartツアーでも映像をふんだんに使ってて、当時は衝撃を受けていました。
–他に影響を受けた人物はいますか。
キリがないくらいいっぱいいますよ。例えば、松本俊夫先生、勅使河原宏、テリーギリアム、Matt pyke、安部公房、JGバラード、とかから常時影響を受けていて、他にもリストにしたいくらい沢山いますね。
–幼い頃に影響を受けたものや作品はありますか。
音楽とかですかね。あと物心ついて初めての大きな映像体験としては、小学校の時に「バック・トゥザ・フューチャー3」を見てた時のこと、当時考えてみると単なるCGの機関車だったんですが、3D状に画面から飛び出して見えていた記憶があります。皆好きなドラゴンボールを読んでたり。単純に映像と音楽が好きだったどこにでもいるごく普通の子供でしたね。
–土屋さんが今後映像を作っていくという風に決めたきっかけになったこととかはありますか。
高校3年の時、ここで選んだらもうこの道しかないなって思ってて。映像以外に自分ができることが見つからなかったんで、なんとかやってくしかないなって感じでしたね。
–P.I.C.S.に入ったきっかけを教えてください。
P.I.C.S.は社員じゃなく、マネージャーから紹介されてマネージメント契約をしています。元々会社としては作品も色々見たことがあるし、誘ってくれたのもここだけで。
–映像の道に入った最初の頃は,どういう風にお仕事をもらっていたのですか。
自分映像を見てもらって、声をかけていただいて、どんどん仕事が膨らんでいった感じですね。自分で営業したことはないです。
–今まで制作に携わった中で1番印象に残っている作品はありますか。
最近の作品だと、NoahのflawというPVですね。色々な人協力のもと作った作品だったのでとても印象に残ってる作品です。
Noah "flaw" from takcom™ on Vimeo.
- -作品を制作する上で、ディレクションを行う際に人と関わることが多いと思いますが、人とのコミュニケーションの中で気を付けていることはなにかありますか。
やっぱり、人とコミュニケーションがとれる人は最終的に強くなっていくと思いますね。コミュニケーションを膨らますための下準備の絵やデモ等を出来るだけ作るスタイルをとってます。資料やプリビズを用意してて。でも相手(クライアントやスタッフ)によっては逆にそれが創造力を阻害されてしまう場合があるんで、場合によってスタイルを変えてます。
–1人で作品を作るのと色々な人と関わって作る作品とではどちらが良い作品になると思いますか。
それはもちろん、プロと一緒に作った作品の方がいいものができると思います。専門の人にはかなわないので、プロの人に任せるところはまかせて良い作品を作ったほうがいいですよね。
–仕事を任せることが出来る人とはどのようにして繋がりをつくったのですか。
ありとあらゆる手段を使って、繋がりをつくっていきました。プロデューサーの方から紹介してもらったり、全く知らない人にコンタクトしてみたり、自分で情報を収集して調べることもやってます。モーショングラフィックとかはマメにチェックして、良い感じの作品を作って居る人を見つけて、協力を依頼することもあります。
–どのように良い作品を作って居る人の情報を手に入れているんですか。
VimeoやTunblerを普段使って、常に情報をチェックしてます。学生の時も、昔は能動的に情報を集めるしかなかったんで、新聞をスクラップしてたりしてました。
–現在、VRやヘッドマウントディスプレイなどの登場で映像業界全体が著しい進歩を遂げ、数年後にはそれが当たり前のようになっていくと思われるが、そのことについて思っていることはありますか。
映像もやっぱり、テクノロジーと一緒に発展してて、最初生まれた時からテクノロジーは必要だったわけで。だから特に発展するのも自然の成り行きというか、当たり前のことなので常に意識していかないといけないことだと思います。それよりもVimeoやYoutubeの発展で、映像や作品の人へのデリバリーにおいてテクノロジーの発展に余地があるなと思ったりします。技術に振り回されすぎずに上手く付き合っていくことが大事ですかね。自分の中でも間口を広げて、なんでもやる!みたいな感じです。
–今映像を目指している学生へ何かアドバイスはありますか。
学生の内は、人の作品を真似ていくことがなんか大切だと思っていて。それを世に出すか、出さないかは別として、時間がある内に人の作品を真似て、勉強することは重要だと思いますね。今、仕事をしていると、作品を作る上で参照元が一個だと少ないんで、色々な作品を参照して初めて一個の作品ができあがるんで。何も参照していない作品なんて絶対存在しないし、作品を制作するときも、自分の作品がどの系統からきているのかの文脈を理解することの方が重要だと思ってて。自分の作品がどこの系統っていう立ち位置を把握またはリサーチして、どの文脈においてどれだけ新しいのかについて客観視できてないとだめだと感じてますね。
–ものづくりをする上で自分の中で意識していることやルールはありますか。
体系的に自分の作品を客観視することとか、そもそもルールを作らない感じですね。予算内でできれば、基本的に何でもありでやってます(笑)あとやっぱり、学生とは違って時間が限られているので、何十年かけて制作することはできないんで、限られた時間の中で効率よくどれだけやっていけるかが大切だと思ってますね。
–仕事をする上で、自分が分からない技術に直面するときがあると思いますが、どのように対処していますか。
その技術の専門の人に話を聞いたり、自分で勉強して乗り越えてます。まあ、でもだいたいどんなことでも専門家はいるんで、どうにかなりますよ(笑)やりたければどんなことでもできると思います。
–土屋さんは海外との仕事を通して得たものはありましたか。
うーん、海外の作家やディレクターの話を聞くとやっぱり理想郷はないんだなと(笑)日本の仕事と基本的にはあんまり変わってなくて、人件費とか土地代とかの制度の違いでやれることは限られてますけど。アメリカの仕事とかは権利関係が厳しかったこととかはありましたね。あくまで自分の見知った範囲での話なので、もっと得るものがあるのかもしれませんが。
–これからの仕事でやりたいことや将来やりたいことはありますか。
なんとか今やろうとしているのは、今年に一本自主で新作をと思ってます。まあでも、常に将来どうなるか分からないので、今の一つ一つの作品を大切に作っていきたいですね。
–学生の内にやっておくべきことはありますか。
自分にとっての後悔の念も含めて、すごいいっぱいありますね。ツールの使い方とかは一週間もあれば勉強できるんで勉強しなくてもよくて、遊びはもちろん、感受性が豊かで、時間がある内に様々な作品に触れてインプットした方がいいと思う。あと、流行ものも片目で追いつつ、変わらないものとして定着している名作と言われてるもの、普遍性のあることにどれだけ触れるかが大切ですかね。
–最後に映像を目指している学生に向けて一言お願いします。
他人のインタビューを見ているようじゃだめ。考える前に手を動かしましょう!

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