そこはかとなく好奇心を刺激するクリエイターの秘密基地。

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今、美大生が会いたい 僕らの師匠【クリエイティブディレクター・浅井 宣通】

      2016/06/21

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現役美大生が「いま会いたい、僕らの師匠」と直球で対談する、最高にクールなクリエーターズ・インタビュー。今回ご登場いただいたのは、プロジェクションマッピングやVRなどテクノロジーの最先端で活躍していらっしゃるクリエイティブディレクター、浅井宣通さんです。
(企画・編集:丸山亜由美、執筆:坂口文華、インタビュー:軍司拓実)

浅井宣通:クリエイティブディレクター

 
1968年生まれ。東北大学理学部卒業。ビジュアルデザインスタジオWOW所属。MV、CM、プロジェクションマッピング、バーチャルリアリティーなど幅広い分野で企画、プロデュース、テクニカルディレクションを手がけるクリエイティブディレクター。2014年にリアルタイム・フェイストラッキング・プロジェクションマッピング”OMOTE”を発表し、1ヶ月で550万ビューの世界的な話題となる。数々の先駆的な3Dプロジェクションマッピングやインタラクティブ、ニューメディア作品を手がけており、広告、デザイン、アートからの発想と、プログラミング的な発想の融合によるイノベーティブな表現に挑戦している。文化庁メディア芸術祭審査員推薦作品選定1回。

――アーティスティックな作品を数々制作していらっしゃる浅井さん。出身は東北大学ということですが、なぜ理系の大学に行こうと決めたのでしょうか?

小さいときから映画やアニメ、マンガ、アートなどは大好きだったんです。一方でテクノロジーにも興味があって、小学生のときから電子工作をやったり、中学ではマシン語でゲームを作ったりしていました。

だから大学を選ぶときに、テクノロジー系に行くか、アート系に行くかですごく迷ったんですが、昔からやりたかったことをやろうと思って、あえてテクノロジー系の大学に行くことを決めました。

――結果的には理系の大学に行ってどうでしたか?

良かったですね。大学時代に学んだスキルは今すごく活きています。

大学生のときはプロのミュージシャンを目指していたので、バンドやDJなど音楽活動をしていたんですが、その傍らでプログラミングもしていました。そのときに、自分にはコンピューターを使って何かを作ることが向いている、と気づいたんです。

――今ではハイテクノロジーを駆使した、全く新しい作品を数々発表していらっしゃいますよね。

新しい技術を生み出すためのプロセスも、実は大学時代に学びました。研究室で研究をするときのプロセスと全く同じなんですよ。

僕が何か新しいものを作るときは、まず「こういう方法でやったらできるんじゃないか?」という仮説を立てて、テストしてみることから始めます。実際にプログラムを書いてみたり、映像を投影してみたりして、自分の仮説が正しいかどうかを調べていく。それを繰り返して、試行錯誤しながら自分なりの方法を見つけていくので、僕の場合は既存のやり方を踏襲することがほとんどないんです。この方法で制作すれば、まだ誰もやったことがないことや、難しくてできなかったこともできるようになるし、だからこそ面白さとか驚きとかも生まれてくるんだと思います。

――まさに理系だからこその発想ですね。アートとテクノロジーを結びつけるときは、どのようなことに気をつけていらっしゃいますか?

アートでもテクノロジーでも、常に「本質」がどこにあるのかを考えます。自分が本当に表現したいことは何なのか、それをどのように表現したいのか。アート面の本質と、テクノロジー面の本質、その2種類の本質が重なったところにすごく強い表現があると僕は考えているので、まず両方の本質が重なるところを見つけようとするんです。そして2つの本質が重なるところが見えたら、「これは作品になるぞ」ということで手をつけ始めるようにしています。

――なるほど。そうすることで技術それ自体の面白さだけではなく、表現としての面白さも出していくことができるんですね。

そうです。あとは表現者が伝えようとしているか、伝えようとしていないかですね。
僕は、自分の中にある伝えたいものと、それを受けとる相手との間をつなぐものが表現だと思っているので、相手に「伝わる」ということを蔑ろにして作ってもダメだと考えています。

たとえば、デザインってコミュニケーションのためのものなので、必ず人に伝わることを目的とするでしょう?どういう形にしたら相手に伝わるか、どういう表現にしたら相手の見方を変えられるかを考えて作る。だから相手に伝わらない表現では意味がないと思うんです。

僕はもともとCMやMVといった広告方面をやっていたので、作品がどのぐらい話題になるかっていうことを常に求められていた。だから、自分だけ良ければいいっていう表現は許されなかったんです。僕はそういった仕事の現場で相手に伝わる表現が鍛えられた気がします。

Ghost in the shell / virtual reality diver from nobumichi asai on Vimeo.

――浅井さんは普段、どのように新しい企画のアイデアを考えていらっしゃいますか?

まず企画を考えるまえに、やりたいことがあるかどうかですね。自分の中にそもそも、やりたいこと、興味をもっていること、好きなことがあって、それらをどうやったら形にできるかって考えていくと企画になります。イメージとしては、ゴールから逆算していく感じです。

やっぱり企画を練るのにも、作品を制作していくのにも、根本には「とにかく作りたい!」っていう強い気持ちのエネルギーが必要なんです。だから自分の中でやりたいことを見つけるっていうのが、なによりもまず大事だと思います。

――やりたい気持ちが強いほど良いわけですね。プライベートなプロジェクトであったOMOTEは、そういった気持ちの強さから始まったのでしょうか?

まさにそうですね。とにかくやりたいっていう気持ちが最初にあって、すでにゴールのイメージも見えていました。でもプライベートな制作だけあって期日がないので、ゴールは見えているのに辿りつけないんですよ。メンバーもみんな、クオリティを追求する優秀な人たちばかりだったから、全員が納得いくまでやろうとすると延々終わらないんです(笑)。

それぞれに考えがあるし、お互いに仕事のぬるいところが許せないからチームが全然まとまらなくて、しょっちゅう仲間とぶつかり合いました。「今回はもう形にならないかも」って不安がよぎることもありつつ、なんとか合格点まで漕ぎつけましたが、最後は忍耐力の勝負でしたね。

――プロ同士でも激しくぶつかり合うことがあるんですね。

でも実は、そうやってぶつかって揉めたりすることって、良い化学反応が起きている証拠なんだと思います。性質の異なる人たちが集まって一緒に作っているわけだから、本来すぐにまとまるわけがないんです。でもそのなかで共感点をみつけたり、逆にほかの人との違いをはっきりさせたりすることで、違うもの同士が混ざりあっていく。そこから新しいものは生まれてくるんですね。だから揉めるっていうことは、面白いものができていく過程の一つなんです。

もちろん、その過程では気力も体力も必要になるのですごく大変なんですが、それでも最後まで進むことで、作品はどんどん磨かれ、クオリティは上がり、ますます面白いものになっていくんですよ。OMOTEのときは混ざりあわないものを強引に混ぜきることができたので、それだけ面白くて良いものができたな、と思っています。

OMOTE / REAL-TIME FACE TRACKING & PROJECTION MAPPING from nobumichi asai on Vimeo.

――制作に様々な人が関わっていくことで、作品が成長するということですね。

そうですね。だからディレクターには、かなり人間力が要ると思います。
人って自分と違うものとは対立してしまいがちなので、放っておけばお互い離れちゃうし、くっつけようと思ってもぶつかります。だけど違うもの同士が混ざると、すごく面白いものができる。だから面白い作品を作っていくには、褒めたり、怒ったり、おだてたりしながらメンバーみんなを融合させていく力が必要になると思います。

――僕は将来、ディレクターを目指しているのですが、メンバーを集めて、仕事を割りふって、それぞれのメンバーの能力を引き出して、といったディレクションの力はどのように伸ばしていけばよいでしょうか?

これは大事な話ですね。
一緒に仕事をする人たちのことを深く理解してあげることが大切だと思います。たくさんコミュニケーションをして、その人がやってきた仕事や得意なものをよく知る。人は、自分のことを深く理解してくれる人のために頑張ってやろうって思うものなので、相手のことを深く知ることでチーム内に信頼関係が生まれて、結果いいチームになっていくんです。それに相手をよく知っていれば、その人に向いている、得意な分野の仕事をお願いできるので、その人の能力を十分引き出してあげることにもつながるんですよ。

だからディレクターやプロデューサーなど、相手に仕事をお願いする側の人は、スタッフ一人一人のことをどこまで深く知っているかっていうのがすごく重要になってきますね。僕はいつも、新しい人と出会ったときはポートフォーリオなどをなるべく丁寧に見て、その人のことをできるだけ理解するように心がけています。

――作品の質を保つために、普段から特に気をつけていることはありますか?

小さなことを一つ一つ大事にすることですね。
作品って小さなプロセスの積み重ねからできているんですが、そのプロセスの一つ一つを大事にしています。

まず企画がダメだと後の全てがダメになってしまうので、良い企画をつくる。次にスタッフィングがダメだと、どんなに良い企画でも実現力が弱くなるので、予算の中で可能な限り最高のスタッフを集めてくる。そして画コンテがダメだと、その後の全工程で引きずってしまうので、キッチリ詰めた画コンテをつくる。その後のCG制作や撮影の段階でも同じように手は抜けないですよね。

こんな感じで、各プロセスに絶対クリアしなきゃいけないポイントがあって、それをしっかり押さえていくことで最後のクオリティが保たれるんです。どこかで手を抜いたり見落としがあったりすると、そこからどんどんクオリティが落ちていく。だから僕は、それぞれの制作段階で必ず、作業に手抜かりがないかチェックするようにしています。

なかでも大きくクオリティを左右するのは、最初の企画制作とスタッフィングですね。その段階までうまくいけば、油断しない限りなんとか最後までいけそうだっていう確信が湧いてきます。やはり最初の段階でダメなプロジェクトは、あとに何をやっても全部ダメになると思うんです。だから僕はいつも、序盤から真剣にやるように心がけています。

↓ リアルトラッキング&フェイスプロジェクションマッピングを用いた最新作「connected colors」

connected colors / real-time face tracking and 3d projection mapping from nobumichi asai on Vimeo.

――浅井さんにとって「表現する」とはどういうことですか?

今の自分の中にある答えは「進化すること」だと思っています。
自分はどんなときに喜びが湧いたり、ワクワクしたりするのかなって考えてみたら、今まで出来なかったことが出来るようになったり、何かが自分の中で進化したときなんですよ。それに同じことを全く同じようにやると、なんか自分が進化していないような気がしてすごく罪悪感が湧いてくるので、僕は常になにかしら前に一歩進めたことを見つけながら制作するよう心がけています。

そのほうが自分にとって楽しいですし、そうした自分の楽しい気持ちは、表現を通して相手にも伝わると考えているので、作品を制作するときはまず、人を感動させたり、楽しませたりしなきゃいけないって考えるまえに、自分が楽しめること、感動できることを大切にしていきたいですね。そのために僕がいつもやっているのは、自分がちゃんと感動できているかチェックすることです。もし自分で「つまらない」と感じていたら、きっと面白い作品にはならないと思います。

――最後に、学生へ向けて一言メッセージをお願いします。

自分の好きなことに素直になってほしいですね。そして課題やバイトに追われるのではなく、自分が好きなものにのめり込んでいく感覚を大切にしてほしいです。これって簡単なことなんですが、意外とできなかったりするんですよ。

ものづくりをする人にとって感動したりワクワクしたりする気持ちは動力源になるものなので、それらを失くしてしまったら面白いものは作れなくなってしまうと思うんです。だから日常生活のなかで、どれだけ自分がワクワクできるものに触れているかっていうのがすごく大事。急にワクワクしようと思ってもできないので、日頃から常に面白いものに触れて心を活性化させておくと良いと思います。

それと、最初はあまり周囲の反応を気にしてはダメです。最初からウケを狙って作るよりは、自分が素直にいいと思うものを作る。周りを気にして不安になることもあるだろうけど、自分で動かなければ何も進まないので、むしろ自分のやりたいことだけにまっすぐ向かっていったほうが良いと思いますね。そうすればきっと、気づいたときには誰よりも突き抜けていたりするんじゃないでしょうか。

だから周りを見て不安になるくらいだったら、むしろ見ないほうがいいかもしれないです。不安からはなんの価値も生まれませんし、周りに振りまわされて自分のやりたいことが分からなくなってしまったら、それこそ本末転倒です。

仕事としてやっていくときは、もちろん世間を意識する必要はあるんですが、表現の基礎になるものって、やっぱり自分の深いところから出てくるものですし、そうじゃないと強みにはならないんです。社会人になると、どうしても外部から固定の価値観を押し付けられてしまうことがあるので、学生のうちは自分の好きなことをとことん深掘りして、外からの圧力に負けないような自分らしさを見つけていくことが大切だと思います。

――好きなことを好きなだけやる。考えてみれば簡単なことなのに、意外と自分もできていなくて、ハッとさせられました。

もう死ぬ寸前までは好きなことをやったらいいと思いますよ(笑)。
本当に自分が好きなことは、とことんまでやったほうがいい。そのほうがむしろ成功への近道だと思います。

人には必ず自分にしかできないことっていうのがあって、そういった自分に向いていることは、どれだけやっても全然苦しくならないはずなんです。何が自分に向いているのかを早く見つけるためには、ありのままの姿を受け入れて、自分の好きなことに素直になっていくことが一番シンプルで近道だと思います。

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