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今、美大生が会いたい 僕らの師匠【映像演出家・スミス監督】

      2016/02/17

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現役美大生が「いま会いたい、僕らの師匠」と直球で対談する、最高にクールなクリエーターズ・インタビュー。今回登場していただくのは、映像演出家のスミス監督。フジファブリックや氣志團といったロックバンドから、でんぱ組.incやNMB48などアイドルグループまで幅広いアーティストのミュージックビデオを手がけていらっしゃいます。その作品の共通点は、見る人に違和感を抱かせる、印象的な世界観。今回は、そんなスミス氏を形作った過去、作品作りへの姿勢、学生に送るメッセージなどをお話いただきます。
(企画・編集:丸山亜由美、執筆:矢島智広、インタビュー:軍司拓実)

スミス:映像演出家

 
武蔵野美術大学卒業後、竹内芸能企画にてミュージックビデオの第一人者である竹内鉄郎に師事。2000年から演出家として活動し、映像に特化したアーティストを独自の表現で撮り続けてきた。情熱的なパーティーチューンを得意としながらも、静謐で奇妙な作品も支持されており、動と静の作風を併せ持つ。近年では、でんぱ組.incの夢眠ねむとの映像ユニット“スミネム”を結成し、活動の幅を広げている。コレオグラファーとしても活動中。
公式サイト:http://smith0204.com/index.html

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ーーどのような幼少時代を過ごされていたのですか?

別に厳しいわけではないですね、普通の親でした。ただテレビだけ見せてもらえなかったです。1日30分と決められていました。そうするとやることは本を読むくらいしかなくて、親に隠れてまで本を読んでました。

ーー大学は武蔵美の映像学科に入られたんですよね。大学時代に周りにすごい方がいて焦りや不安を感じたことはありますか?

いや特に焦りはなかったです。何の知識もなく美術大学に入ったので、とんでもない人たちばかりかと思っていたんですが、そんなことはありませんでした。大学に行ったらすごい人がいて、何とかしてくれるのかなと漠然と思ってたんですが、そんなこともなくただひたすら電車に揺られてました。

ーーそして武蔵美を卒業された後に、竹内芸能企画に所属されていますよね。そのきっかけがお友達の付き添いで、その後次第に通うようになったと聞いたのですが、それまでに弟子入りするチャンスをうかがったことはあるのですか?

就職活動とかやり方がわからなくて卒業したらアルバイトをやるしかなかったんです。人生どうなってしまうのかと思っていたら友達がミュージックビデオの現場を見に行くと言っていたので「じゃあ俺も行きたい」と思って行ったんです。

ーー竹内さんに憧れはあったのでしょうか?

当時はまったく知らなかったです。

ーーそうなんですか。竹内さんもスピッツなどのミュージックビデオを手がけていて、映像作家の中でもかなり有名な方ですよね。僕たちがスミスさんに憧れを抱くようにスミスさんも学生時代から憧れていたのかと思いました。

誰かがミュージックビデオを作っているということを意識していなかったです。

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ーー大学で講義を受けるだけではなく、現場に行ってその雰囲気を感じたり、実際に触れたほうがいいと聞いたのですが、やっぱりご自身が卒業後に、実際に事務所で映像を作るようになったということからなんですかね?

もともと大学にいるときから、映像は自分でお金を出して作るものじゃないと思っていました。思い通りのものが作れないとわかっていたので、あまり自主映画とかも作ってなかったですね。作るならプロのところにいって人のお金で作ったほうがいいなと思っていました。やりたいことに合わせていいと思うんですけど、学生時代にプロのやっていることを見て損はないのかなと。やりたいことにたどり着いたんだったら学校はあんまり頑張らなくてもいいんじゃないかなと思います。

大学時代にプロの現場に入って「あ、これが自分に向いてるな」と思ったらそっちに行けばいいんじゃないですかね。自分は大学で今の仕事に直接使えることはあまり学べなかったですね。技術はプロに入ってから十分学べることでした。大学時代はいろんな作品、特に自分がそれまで関心のなかった芸術を知る機会ではありました。時間があるから美術館とかに足を運ぶこともありましたし、刺激を受けました。

ーー学生時代に培った経験が今活きてるなと思ったことは?

学生時代の時間は大事です。興味のなかったことに触れるチャンスです。社会人になると時間がなくなって、偶然の出会いみたいな機会は極端に減ります。大学時代に自分のやりたいことへのヒントを探したいのなら、自分の好きなもの以外にも様々なアートに触れる方がいいと思います。もし映像が好きだったら、つい映像ばかりを追求してしまいがちですが、それ以外のメディアを見るのも大事だと思います。映像と絵画は何が違うのかを考えたり、映画とドキュメンタリーの違いを考えれば、そのルールがわかるわけじゃないですか。ミュージックビデオでドキュメンタリーっぽい作品をろうと思ったら、そのルールに則っとればドキュメンタリーが作れますよね。ルールの境界線がどこにあるのかを見極めることができれば、それを超えた作品ができるかもしれません。自分が面白いと思った作品がどうして面白いのかを考えることが芸術大学で学ぶことの意義なのかなと。別に面白いと思うのはまあ誰でもできるじゃないですか。でもそれについて熟考することがプロへの道だと思います。

天才は発想が思いついて止まらないんですよ。自分はそんな天才タイプではないんで。まあでも天才ではない方が仕事としては長持ちすると思います。天才はいつ石油が止まるかわからないじゃないですか。それに比べて僕は水と油で偽の石油の作り方をマスターしちゃったんで、そうした方がとりあえず車は長く走るかなと。

ーースミスさんのミュージックビデオで特徴的なのは、可愛い女の子を出演させて、真顔であったり、一風変わった踊りをさせるパフォーマンスといったものが目立ちますが、見る人に強いインパクトや違和感を与えるスタイルのルーツはなんなのでしょうか?

そちらの方が、見る人の印象に残りますよね。バンドのミュージックビデオと言ったらバンドが演奏していて、その間にイメージ映像が差し込まれていくような作品が多かったんですよ。僕はその構成があまり面白くなかったんで、もっとストーリーと音楽が融合しているような映像を作りたかったんです。

ーー日本的なロケ地で映像を撮ることが多い理由はなんですか?

僕が仕事を始めた頃って海外の映像作品の真似をするのがカッコイイと思われていたんですよ。日本でアメリカっぽい場所で撮るみたいな。でも僕はそういうのがあんまりいいとは思わなくて。せっかく日本に生まれて日本で育ったのなら、日本の風景で画になるとこで撮ったほうがいいですよ。当時はYouTubeがなかったんですけど、今なんて誰でも見れるじゃないですか。例えばマドンナのMVと似たようなものを作ってたら真似をしていることがすぐにばれてかっこ悪いじゃないですか。それだったら全然違うものを作ったほうがいいと思ったんです。僕らがロンドンの風景をカッコイイと思うように、海外の人は日本の風景をカッコイイと思うのではないかなと。

ーー最近はYouTubeなどが発達して、音楽と同時に映像を見るという機会が多いですよね。それによって視聴者を意識していく映像作りというスタイルが主になっている中で、ビューワーの声を直接聞く機会も増えたのではないですか?

ツイッターでエゴサもしますが大したことは書いてないです。

ーー視聴者の声を聞いて次の作品の参考にすることはありますか?

あんまりないです。そこまでアドバイスしてくれる人がいればいいんですけどね。なかなかそのような意見がないので。

ーー視聴者を意識した作品作りで大切なことはなんですか?

一度面白いと思ってくれた人はまた次も見てくれるんで、新しく見る人をどうやって獲得していくかということが重要です。あとは動画をみはじめたら最後まで見てもらえるように工夫して作れるかということですかね。自分も結構飽きっぽいんで、自分が見て飽きない作品作りを心がけています。

ーー普段作品を見るとき、聴くときには意識的にインプットしようとしているのですか?

あんまり意識すると、だいたいうまくいかないですよね。映画は単純に見たいんですが眠いので…元気なときに観るようにはしていますが、インプットというほどではないです。映画をたくさん見たら映画をたくさん撮れるわけではないですし。

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ーー普段からどれくらい映像を見ているのですか?

普通の人と同じくらいだと思いますよ。僕はAMラジオのPodcastを聞いてますね。普通に聞くと4.5時間かかっちゃうんで倍速で聞いてます。あとは仕事と睡眠時間をとられてなかなか映像を見る機会は少ないですね。映画もしっかり見たいのですが、途中で寝ちゃうんでいつも開始1時間しか見れません。

ーーミュージックビデオの撮影時は大人数の方が関わると思うのですが、その中で監督としてこなさなければいけないことはなんですか?

面白いとか面白くないってことは本当はそんな大したことではないんですね。「宇宙空間で野球をする」とか「犬が喋る」とか、誰でも面白いことなんていくらでも思いつくわけですよ。でもそれが期間とか予算とか締め切りとかに間に合うかどうかという判断ができないからうまくいかないんです。制限された中で最大限の表現を選択していくというのが監督の仕事として一番大事なところだと思います。アーティストなら、どんな想像を現実に落とし込んでも、それが表現となるので価値があるのですが、プロとしては現実にうまくまとめないと、仕事にはならないですね。

ーーやはりそういった経験は、現場で監督さんのそばにいた方が吸収できるのでしょうか?

そうですね、僕は監督のアシスタントとしてアイデアを提案したりする機会がありました。例えばチャンバラのシーンを撮るというときに、かっこいいシーンとして投げられたリンゴを刀で切るという場面を撮りたいと提案したりするわけじゃないですか。それが採用された場合実際にリンゴを現場で切るわけですよね。そして本場やってみたら全然きれないということが起こりうるんです。この場合、アシスタント側は「リンゴはこんな刀じゃ斬れないんだな」という経験が積まれるんですよ。でも自分は別にダメージが無いんです。監督が時間をロスするという損を自分の代わりにやってもらえるということがあるんです。

自分がリスクを負わずにいろいろな試行錯誤ができる、僕はそういう細かいことを現実に落とし込むという経験がアシスタント時代にできました。多くの人が監督をやりたがるのですが、それはいつかやらないといけないときが来るんですね。そっちは急いで経験する必要は全くなくて、それより細かいことを積み重ねていった方が作品の全体像としてどれくらいのクオリティーのものができるが把握できるし、いざ大きい仕事を考えるときに細かな経験が活きてくるんです。

ーー現在、でんぱ組.incのメンバー夢眠ねむさんとユニット「スミネム」を組んで活動されていますが、その中で新しく得るものとはなんでしょう?

他人の発想を現実に落とし込むという面白さに挑戦しています。ねむちゃんには現実化するということなしに、やりたいことをストレートに言ってもらって、それをいかに現実に近づけるかというところが難しくもあり面白いですね。立場が対等という点では、アシスタントと監督間では作れないものが作れるんです。

ーー今後の活動について、新しい作品に挑戦する見通しはありますか?

撮りたいと思っているのは映画ですね。自主制作にも取り組みたいのですが、仕事に時間を奪われてしまうので。スケジュールをどううまく調整していくか試行錯誤中です。

ーー最後に映像作家スミス監督として学生にこれだけは厳守だというアドバイスをお願いします。

締め切りじゃないですかね。締め切りさえ守れば仕事としてはやっていけるんじゃないですか。学生は締め切りの大切さをわかってない人が多いですね。限られた時間の中でどれだけ面白いものを作るかがお金になるんです。仮に「10年かかって面白いミュージックビデオ作りました」と言われても作品としての価値はありますけれども、プロとしては成り立たないですよね。

ーー締め切りにまつわる学生時代の経験はありますか?

学生時代に締め切りに苦しめられたことはないですね。また新しい課題も出ることだし。逆にみんなそんなに何に悩んでるんですか?

ーーなるべくいいもの提出したいという意欲が強いのだと思います。提出日の朝まで寝ないで作品を仕上げる学生が私の周りにもいますね。単純にスケジュール管理ができていないのが問題なのですが。

そういう行動は悪い癖がつきます。仕事ができる人は、まずその工程を細かく分類して、期間を割り振るんです。一個一個の仕事をマトリックスにして重要、重要じゃない、急ぐ、急がないに分けると仕事が片付くそうですよ。そうインターネットに書いてありました。

ーーではスミスさんもそのやり方で?

いや、自分はぎりぎりまでやりませんね。ぎりぎりになって重い腰を上げて取り組み始めます

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